2012年12月30日

予防啓発と検査と支援の関係性が問われる日本エイズ学会報告郵送検査編とか。

年の瀬のご挨拶の前にもうひとつだけ学会報告を。
4本目のエイズ学会報告は臨床と社会をつなぐ【HIV検査の方向性】を取り上げていきたいと思います。いろいろ考えて今年はこれをラストにしようと思います。
検査の話ですが、治療の開始時期の話と絡んでいる問題でもあります。

アフリカで、陽性者と陰性者のカップルを対象に、陽性者を早期治療すると陰性者への感染率が低くなるという実験結果が出たという話、聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もう少し細かく説明すると、陽性者と陰性者のカップルを無作為に2グループにわけて、片方はCD4が一定以下になるまで投薬しない、片方はCD4を無視して治療を即開始するというグループに分けての研究で、全てのカップルにはセーファーセックスに関する知識や意識付けの教育を実施し(ここで差が出ると比較対象にならない)、それでもセーファーセックスがうまくいかずに感染してしまうケースがどのくらいあるのかを追跡するというものです。
で、2つのグループで感染が成立してしまう割合に変わりがなければ、治療開始時期が予防に影響を与えないっていう結果になったのですが、実際には早期に治療したほうが圧倒的に感染成立が少なかったため、陽性者を早々に投薬治療してウイルス量を下げておけば、セーファーセックスに失敗しても感染が起きにくいっていうことが証明されたという話です。

つまり、「感染拡大を防ぐ、予防のために治療しよう」ということです。
「予防のための治療」ということで、“Treat as Prevention”、略してTaPと呼ばれます(本当にHIV界隈は何でも略すのが好きですね)。
しかしながら予防のための治療のためには、当たり前ですが治療の対象を見つけなければなりません。
そのため、「バンバン検査してまだ見つかっていない陽性者をどんどん見つけよう!」的な考え方を持っている人たちを後押しする形になっているのです。

ただ、検査を推進する側の言い分はわかるものの、検査を受ける側、また実際に検査を担当する人の状況はどうなのでしょう。
かつて告知状況についての陽性者アンケート調査がありましたが、告知時の状況は必ずしもスムーズな受診につながるものとは限らず、告知担当者のスキルが非常に問われるものであると思います。

そんな中で、今回の学会は郵送検査に関する内容がとても多かったのが印象的でした。
中でも僕が個人的にもとても注目していた一般演題発表の一つが、MASH大阪の郵送検査(演題番号O23-107)。MSM向けに実施するということは陽性率がある程度高い可能性がある層を対象にしているわけでよりセンシティブです。
もちろん実施側もわかっているので、郵送検査キットをイベントで配布して、当日は検査会社の人をイベント会場のブースに呼び、電話相談や対面での告知が可能な状況を整備して、数ヶ月に及ぶフォロー期間を準備しての取り組みでした。
これ聞いていた方はわかると思うのですが、発表者は批判を覚悟で発表していたと思います。実際の検査利用者がフォロー体制にどのくらい乗ってくるのかわからないし、一人で自宅でネットで告知を受けることも可能なので、そこで陽性の告知を受けた場合のフォローはどこまでやっても結局は当人の行動にゆだねられるわけです。

ただ、この演題、前のレポートでも紹介したHaaTえひめの人がぼそっとこんなことを言っていたんですよね。
「地方で早期発見を目指すなら、郵送検査を選択肢の一つにしないと難しいんじゃないかな」
地方ではまだまだ平日の昼しか検査やっていないとかいうエリアもあり、町のクリニックは待合室に知り合いがたくさんいる(クリニックの選択肢が少ない)といった環境で「早期発見」を目指すには、どうしたらいいのかということですね。
早期発見という意味合いよりは、発症する前に感染に気がつくことができる環境を整える、という言い方がいいかもしれません。

ごく最近郵送検査が6万件を超えたというニュースがありましたが、企業サイドからフォローアップに関する話題も出ていました。
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/121225/ecb1212250951000-n1.htm
社名ではピンとこなくても「STD研究所」というサイトは知っているかも。そしてこの会社こそ、大阪の検査でイベント会場にブースを出した会社なのです。

アメリカのガイドラインはCD4の数値関係なく即投薬へと動いているという報告もありました。検査から治療までが短くなっていく中で、どんなフォローができるのか、そして早期発見の名の下にしていいこととしてはいけないことはどう線が引かれるのか、慎重に推移を見ていくことが大事だろうと思います。

最終日の公開講座の座長でもあった、産経新聞の宮田さんがまとまった記事を書かれました。
予防としての支援、という言葉、これから重要なキーワードになりそうです。
こちらもご参照ください。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/121212/bdy12121207400004-n1.htm
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2012年12月29日

これからへの展望を予感する日本エイズ学会報告抗HIV薬編とか。

続いて学会報告です。
三番目に取り上げるキーワードは、【新しい治療コンセプト】です。

薬の話については、今年は中間報告っぽい話題が多かった気がします。シーエルセントリの実績報告も名古屋医療センターなどからありましたが、エジュラントはあまりなかったし、これは来年が本格的になるのかなと思います。来年の熊本学会は抗HIV薬の世界的第一人者である満屋先生が学会長なので、それもあって薬関係は来年盛り上がると思うんですよね。
今年はスカラシップで参加された陽性者の方向けに薬剤名と略語の対照表を配ったりしたのですが、どのくらい役に立ったんだろう、って感じでした。

そうしたわけで今年の学会は、どちらかというと「今後の展望」的な話題がいくつかありました。
話題としては、“NRTI-Spared”と“STR”の話です。なんだその略語、ってことでレポートしていきます。

“NRTI-Spared”はNRTIを使わない処方、つまりツルバダやエプジコムをつかわない処方のことです。
インテグラ―ゼ阻害薬のアイセントレスが登場して、「アイセントレス+カレトラ」「アイセントレス+プリジスタナイーブ」みたいな処方でもいけるんじゃないかという話が出たのが、一昨年。去年は実際にやってみていけるという話。今年はもう少し踏み込んだ分析がありました。

副作用も少ないのでものすごく期待されていた、アイセントレス+プリジスタナイーブですが、実はウイルス量が多い人だとウイルス学的な失敗(ウイルスの減りが悪い)が多いという報告がありました。
膨大なデータがあるわけではないので絶対的な指標ではないのですが、特にウイルス量が10万コピー以上で投薬を始めた時に成績があまり良くないとのことです。
逆に言えば、それなりに早期発見できた人や、ツルバダやエプジコムである程度はウイルスを抑えたけれど副作用などの関係で切り替える人(プリジスタナイーブではなくプリジスタってことになりますが)はそこそこ効果があることもわかってきたということですね。
これ、言いかえると、インテグラーゼ阻害剤の新薬が出てくれば、アイセントレスではなくその新薬を組み合わせることができる可能性も充分広がり、薬の組み合わせとして第一選択ではないものの選択肢は広がるという期待がかなり高いと考えていいと思われます。

そしてインテグラーゼ阻害剤の新薬は来年あたりの導入に向けてすでに控えています。
それはドルテグラビル(商品名はまた別につけられるはずです)。これは1日1回服用のインテグラーゼ阻害薬で、効果も全くこれまでの薬に劣らないことがすでに確認されています。

インテグラーゼ阻害剤の新薬はもう一つエルビテグラビルがあるのですが、こちらはツルバダなどとの合剤として発売される見込みなのでNRTI-Sparedということにはなりません・・・・で、こっちが“STR”なのです。

“STR”は“Single Tablet Regimen”の略。つまり1回の服薬が1錠で済む処方ということです。
ツルバダとエルビテグラビルにブースター(抗HIV薬の効果を高めるための薬)のコビシスタートという薬を合わせた合剤、ストリビルド(Stribild)が登場します。
これは1日1回1錠ですむ薬です。大きさはやや大きいのですがエプジコムとか何の問題もなく飲める人ならまあいけるような感じがしますね。
ただこれ、今のところ薬価がかなり高くなることが見込まれていて、バンバン導入するってわけにもいかない様子。患者は公的な補助がありますが、薬価が高いってことは病院や院外処方薬局は先払いで購入しておかないといけないので負担が増えます。もちろん公費の補助も増えることにはなりますが、病院なり薬局が採用してくれないとそもそも処方されることは無いので、そちらの動向も気になるところです。

ちなみにストリビルド、ちょっと前まで「クワッド」と呼ばれていたものです。こちらの名前で聞いたことがある人もいるかもしれませんね。

年末のばたばたの中ですが、レポートはあとひとつあげます。
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2012年12月27日

地方の時代が来た予感が確信にかわる日本エイズ学会報告MSM編とか。

エイズ学会報告、社会系はやっぱり【MSM】からです。
ちなみにMSMっていうのは男性とセックスする男性のことです。自己認識のセクシュアリティーに関係なく、行動として男性とセックスをしている人全般をさしています。

MSMっていうと、これまでだとだいたい首都圏と阪神圏中心、プラス福岡と名古屋みたいな感じだったのですが、今年は違いました。
東京・大阪の次に発表が多かった地域は、なんと愛媛。
全国の政令指定都市の半分以上を抜き去って愛媛。これは画期的なことです。

とはいえ、僕自身MSM向けのボランティア活動とかしていて、これは実は驚くべきことでも何でもなくて、当然の帰結だなって感じがしました。
愛媛でMSM向けの活動をしている「HaaTえひめ」という団体があるのですが、ここ数年の活動状況から言って、こうなるのも時間の問題だってことはMSM関係者はわかっていたことだったのです。それだけ彼らは様々な活動をしていて、単なる予防啓発だけではなくて陽性者の手記リーディングイベントやティーンエージャーのMSMを応援するイベントなど様々な切り口の活動を展開しています。
熱心に活動している人がいる地域が盛り上がるのは当たり前。
むしろ、何もない地域の行政の人とかにこのインパクトを感じてほしいと思います。地域のMSMの人が名乗りを上げて動き始めるのを待つことが行政の仕事ではありません。
全体のまとめをするラパトアセッションでも、都市型モデルから各地方でのカスタマイズモデルの時代へ転換しつつあることが指摘されていましたが、その地域に合った活動をどう展開するのか、CBOを行政がどうバックアップするのか、CBOが無い地域なら行政は何をすべきなのか、そこがこれからの行政の課題というものでしょう。

まあ同じようなボランティアしているところからしてみると、HaaTえひめの活躍ぶりはプレッシャー以外の何物でもないのですけどね(爆)。

それから、MSMの話題が今年はMSMの一般演題だけではなくて、検査相談体制の演題などでも多く出ていました。
これは名古屋市立大学の市川誠一先生が中心になった「エイズ予防のための戦略研究」が2010年に終わって、その後コミュニティーセンターが事業化されたり保健師向けの研修が実施されたりという流れができたことも一つの要因かと思います。
ちょっと前の学会では「うちにはMSMの患者はいません」とか豪語するブロック拠点病院の医師とかいたわけなんですが、そういう時代に学会参加をはじめた身としては、保健師さんや医療関係者も多い検査相談体制の演題にMSMがより深く入っていくことは重要だと思うし、感慨深いですね。
その市川先生は、エイズ学会で功績を認められた人が年に一人だけ表彰されるアルトマーク賞に選出されました。
戦略研究に関わった団体の人がほぼ勢揃いで受賞講演を聞き、先生に内緒で用意した花束と色紙を渡し、プレナリーセッションそっちのけで(岩本先生すみません)、会場の廊下で市川先生を囲みました。市川先生の奥様も来られていてご挨拶をいただいたりしました。JaNP+の長谷川さんが感極まって号泣され、それが引き金で全員涙腺がやばいことになっていて、何もご存じない方が端から見ると異様な光景だったと思います(でもそれだけの想いがあったということです)。

HIVはMSM特有の病気ではないものの、MSM側の視点から見たときに、MSMのコミュニティーというものがあるとすればコミュニティーにとっての重要な健康上の課題であることは間違いありません。そうした視点の転換を僕に教えてくれたのも今思えば市川先生でした。
シンポジウムなどでアジアのMSMの話題も出ていたのですが、台湾では毎年1500人規模のMSMの新規感染がわかる状況である一方、MSM向けのHIV予防啓発活動をすることがMSMへの差別偏見を強めるのではないかという懸念があってなかなか推進(特に予算化の面で)ができないとの報告がありました。
その懸念はわかるのですが、かといって突きつけられている現状は早急な対策が必要であることを示しています。おそらくこうした懸念はコミュニティーと行政の双方から出ていると思うのですが、ではどのような方法や規模の活動を展開したらいいのかということに踏み込んで活動が進むことを願いたいと思います。

あともう一つ、福岡の報告のある数字が目に留まりました。
福岡でやったゲイのスポーツイベントに連動してMSM向けの検査会を実施したところ、陽性率(検査を受けた人の中の陽性割合)は5%くらいだったとのこと。
この5%って数字、実は名古屋や大阪といった他の地域のMSM向けの検査イベントなどを見ても、妥当な感じのある数字なのです。
こうしたイベントの場合、MSM限定でなおかつリスク行動の経験のある人が検査の対象になるので、MSM全体の陽性率から見ると高めに振れることは計算に入れないといけないのですが(完全セーフでセックスしているMSMの比率がわからないので)、だいたいどこのイベントでも3〜5%くらいの数字が出るんですよね。
なので、この数字を見たときに、「福岡でもやっぱりそうなのか」という印象があったのです。
ただ、こうしたデータは都市部のデータばかりなので、地方はどうなのかとか、まだまだ実態は不明なところもあります。

MSMの問題だけに限りませんが、都市から地方へという流れの中で、地方では特に声をあげる人が出にくいであろうMSMのことをどう扱っていくのかが重要です。
折しも、学会は来年は熊本。
地方で開催される学会でMSM向けの取り組みが地域の保健所の方とかに伝わるようにしていかないとな、と思い直しています。

まあとりあえず、松山より規模が大きくてでもMSM向けには何もやっていない地域に学会が行きますように(もちろん熊本もそういうエリアです)。

MSM関係はもう少し検査のことを書きたいのですが、それは単独のレポートに。
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2012年12月26日

また新しい課題が登場した日本エイズ学会報告HAND編とか。

ばたばたして全然更新できていなくてすみません。
でも、学会の報告だけはちゃんとやろうと思いました。

慶應大学日吉キャンパスで開催された、第26回日本エイズ学会から1ヶ月が経過しました。
形式はここ数年と同じように、今年のキーワードを軸に何本かアップしていく形式です。

まず最初に取り上げるのは、今年臨床系で話題沸騰、【HAND】であります。

HANDは“HIV-Associated Neurocognitive Disorders”の略です。neurocognitiveって滅多に目にしない単語ですが、「認知神経科学的な」などと略される言葉で、HANDの訳は「HIV関連神経認知障害」となるそうです。
認知障害というと、以前は痴呆症と言われていた高齢者の「認知症」を想像しがちですが、HANDというのはもっと幅の広い言葉のようで、認知機能の低下レベルに応じていくつかの段階があるようです。

・HIV関連認知症(HAD = HIV-Associated Dementia)
 →重症の認知機能障害、運動/行動異常がある

・軽度神経認知障害(MND = Mild Neurocognitive Disorder)
 →転倒しやすいなど、日常生活に軽度の障害がある

・無症候性神経認知障害(ANI = Asymptomatic Neurocognitive Impairment)
 →日常生活上では症状が見られないが神経心理試験などにひっかかる

このうちHADは目に見える障害なので、逆にこれまでの治療の過程でもまず見逃されることはなかったわけですが、実はよく調べてみるとHIV陽性者に同じ世代の陰性の人に比べて軽い認知障害がみられる事例が多いことがわかって、これからはMNDやANIにも注意しましょうという流れになっていて、今回の学会で突然注目を集めたということなのです。
認知機能障害は軽度であっても、薬の飲み忘れが増えるリスクがあるとか、転倒しやすくなったりということがあります。最近は骨密度の低下の副作用が話題になっていましたので、それに加えて認知機能障害で転倒が増えれば当然骨折のリスクが高いということにもなりますね。

そこで問題になるのが、「じゃあどうやって判定するの?」ということなんです。
認知機能を判定するための神経心理試験などの検査、本格的にやろうとすると一人2時間とかかかってしまうそうなのです。
これ全員にやろうとすると、患者さんが集中している病院では物理的に無理だろって話。なので、まずはそうした本格的な検査が必要な人とそうでない人を見分ける手法を確立することが必要、っていうのが臨床的に課題になっているわけです。

ヨーロッパのガイドラインには既に、簡単な質問を3点実施して、それによって気になる所見があれば本格的な検査に進む、ということが盛り込まれているそうなのですが、日本人の性格的なものを考慮して日本版のHANDスクリーニング法(検査が必要な人をふるい分けする方法)が必要だという提言がありました。
日本人は曖昧な回答をしがちなので、ヨーロッパの質問をそのまま導入しても判定しにくい可能性があるので、日本人向けのものを開発しようってことです。

それからもうひとつ重要なのは、認知機能の検査にひっかかったときに、HIV以外の原因ではないのかをきちんと検査すること。
HIVが脳の血管に炎症を起こすなどして起こるのがHANDなのですが、HIV陽性者の寿命が延びた今、別にHANDでなくても高齢による認知障害が起きたりすることはあるわけで、そこをきちんと鑑別しないと、適切な治療ができないわけです。

HANDの治療についてもちょっと解説がありました。抗HIV薬の中には脳にいるHIVに影響を与えやすいものと与えにくいものがあることがわかっていて、つまり与えやすい薬に変えると、HIVが原因だった場合は認知機能障害が低減するわけです。今後出てくる新しい薬も脳への影響が常に評価されていくと思います。
なので、HIVが原因ならそうした治療が効果が期待できるわけですが、HIVが原因ではなかった場合をきちんと見分けず薬を変えると、これまで効果が高かった薬をわざわざ変えて、副作用なんかも出たりして、でも認知機能は改善しない、みたいな状況になることも考えられます。なので鑑別がまさに大事なのです。

逆に患者側としても、「最近物忘れがひどい」「何もないところでよく転ぶようになった」なんてことは感染症の外来ではあまり言わないことだったと思うのですが、これからはちょっと相談してみてもいいかもしれません。
メンタルヘルスの問題なども認知機能は関わるので、患者自ら勝手に診断するのではなく、可能性の一つとして主治医と一緒に考えてみるのがいいんじゃないかという印象をもちました。

今年の学会報告は多分4本かなと思います。あいにく画像をほとんどとっていないのでテキスト中心ですがご容赦ください。
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2011年12月30日

学会を通してこれからのMSM向け対策を展望してみるとか。

学会の振り返りをもうひとつ。
この記事のキーワードは「ポスト戦略研究」にします。

僕もボランティアとして少しお手伝いしていたので、「エイズ予防のための戦略研究」(以下「戦略」とします)が3月で終わって、その発表が山のように学会で繰り広げられたのは感慨深いものがありました。
同時に「ちょっとこれ多くない?」という気も多少ありましたが(苦笑)。
2日目に2時間半という超長いシンポジウムがあり、一般演題でも1時間10分の「MSM-2」は全部戦略関連、ほかにも一般演題の口演が2本にポスターが2本とまあ膨大な発表がありました。

戦略はそれだけ大掛かりなプロジェクトで、首都圏では保健師研修、関西ではクリニックでのSTDも含めた1000円検査など、MSM(男性とセックスする男性を指す言葉)向けの活動だけでなく検査施設向けのことをやったり、webサイト「HIV」マップを作ったり、さまざまな冊子などの資材を作ってきました。
http://www.hiv-map.net/
そして、戦略研究の拠点となるのが東京は新宿二丁目にあるakta、大阪は堂山にあるdistaというコミュニティーセンターでした。
こうした拠点を持って、ゲイの人が多く集まる地域で予防啓発を実施する、ということへの効果が認められて、エイズ予防財団を通して各地のコミュニティーセンターが今年度から事業化されたことが、戦略の大きな成果であったといえると思います。

事業化されたのは、以下の6つのセンターです。
ZEL(仙台/運営はやろっこ)
akta(東京/運営はakta、旧称RainbowRing)
rise(名古屋/運営はANGEL LIFE NAGOYA)
dista(大阪/運営はMASH大阪)
haco(福岡/運営はLove Act Fukuoka)
mabui(那覇/運営はnankr)

さてこう書くと、多少コミュニティーセンターのことをご存知の方は、「あれ、横浜のSHIPは?」となると思います。
かながわレインボーセンターSHIPというのが横浜にあります。
http://www.ship.y-cru.com/
実はSHIP、そもそも資金の流れがまったく違うんです。これは神奈川県の「かながわボランタリー基金21」から資金が出ていて、エイズ予防のための戦略研究での事業化の枠の中に入っていないんですね。
なのでSHIPにはこの事業化に伴う後ろ盾はありません。

さらに地方に目を向けます。
国策である以上(エイズ予防財団は厚生労働省の直下)、もうちょっと地域的な公平性をはかろうとするなら、北海道と北陸と中四国にもセンターがあるべきです。
政令指定都市で言えば札幌、新潟、広島とありますしね。
しかしながら、今度は運営できる団体が必要です。それもこの事業はMSMを対象にした団体が必要です。
たとえば札幌にはWAVEさっぽろがありますが、バーのママさんたちによるグループなので、バーをやめてセンター事業を、というのは難しそうに思います。レッドリボンさっぽろはMSMオンリーではない、といった具合です。
北陸は・・・・今のところ僕が把握している団体はないです。
中四国はもともと薬害の方たちによる団体であったりょうちゃんずが広島にありますが、MSM向けのグループとなると瀬戸内海の反対側、松山にあるHaaTえひめがエリア内最大手ということになってしまいます。中四国っていうくくりも中国と四国に分けるべきという意見もあるかもしれません。
願望だけで言うなら、松山くらいの規模(人口50万で地域の中心地になっている都市)のところにはコミュニティーセンターあってもいいよね、くらいの気持ちなのですが、あとは予算の問題です。
ちなみにHaaTえひめはおそらく日本でも一、二を争う先駆的な予防啓発団体なので、お金さえあればあの人たちはすぐにでもやると思います(苦笑)。

コミュニティーセンター事業だけみても、大事なのはむしろこれからで、それこそ事業仕分けでなくならないように頑張っていかないといけないということが如実にわかるのですが、戦略全体を考えても、さまざまなイベントや冊子製作の費用は「調査研究費」としてお金が出ていたので、それがなくなり、事業として運営していかなければならない中、どんなふうにMSM向けの予防啓発活動を維持していくのか、ということが最大の課題であります。

で、また個人的な意見になってしまうんですけど、学会でよく医者が「20代の患者一人にかかる『公費』が生涯で1億円」とか抜かすわけですよ(今回も3回くらい聞いた)。その発言を聞くたびに、予防啓発って「その活動で何人の感染が防げたか」が算出できないので困るんですが、それでもX億の予算があればX人以上の感染予防ができるんじゃないかなぁとか思ってしまうのですよね(もちろん予算が少なくすむのにこしたことはありません)。

そういうわけで、戦略研究が終わって、予防啓発は試行錯誤や調査の時代から、費用対効果が評価される時代になったと言えそうです。調査は「この手法は効果がないことがわかりました」でも意味があるけれど、事業はそれでは意味がないのです。
戦略研究は東京ではエイズ発症でわかる人が減って早期発見率が上がりました。しかし大阪では逆の結果が出ました。これを分析評価して、さらにこれからの事業も同様に分析して、評価を受けながら進んでいくことになります。

そうそう、最後にもうひとつ。戦略のシンポジウムは二時間半の長丁場でしたが、学会でも他にないくらい、長い拍手をいただきました。関係者の人はけっこうその長さにぐっときていました。
僕もそうです。シンポジウムにいらっしゃった皆様ありがとうございました。
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2011年12月25日

福祉とHIV/AIDSを考えるエイズ学会報告その1とか。

今年は学会以降毎週のようにイベントごとが続いたので、学会のまとめが遅くなってしまいました。
でも年越しは何とかさけて、きちんと今年のうちに振り返ろうと思います。

毎年エイズ学会の報告の形式は考えるところがあります。
日付別に書くと、基礎・臨床・社会の各分野の話が常に混ざることになるので、昨年はテーマごとに書いたのですが、横断的な話が扱いにくいということもありました。
そこで、今年はいっそのこと、僕がこれだと思ったシンポジウムや、演題発表についてダイレクトに書くことにしようと決めました。
とはいっても結局長文になってしまうのですが、よろしくお付き合いください。


まずは初日の夜の社会系のシンポジウムから。
ソーシャルワークのシンポジウム「HIV陽性者の包括的生活支援を目指して〜ソーシャルワーカーによるミクロ・メゾ・マクロ実践への挑戦」に行きました。
このシンポジウム、一番奥だしとても小ぢんまりとしていたけれど、内容的にはとても良かったです。陽性者向けのスカラシップの裏番組になってしまったのですが、当事者の人にもぜひ参加して欲しいシンポジウムでした。

まず良かったと感じた点は、本来は当たり前だろうという話になるべき部分ですが、HIVをめぐる諸問題がはじめて「地域福祉」の世界に降りてきた、という感じがあったこと。
調査研究レベルではなく、実践としての話です。

このシンポジウムは東京・八王子の社会福祉法人武蔵野会の山内さん、大阪・門真の地域生活支援センター「あん」の脊戸さんが地域福祉側のパネリストとして立ち、それに対して医療側も東京・駒込病院の関矢さん、大阪医療センターの岡本さんがパネリストとなり、概ね経験談ベースの話をしながら、和やかに困難さと今後に向けての提言をぶつけ合うという構成になっていました。聞いていないのでわからないのですが、多分スカラシップのシンポジウムより理解しやすかったと思います(憶測による風評の例)。

地域福祉とHIVは、最近は高齢陽性者の問題として語られることが多いのですが、それだけではなくて、例えば知的障害を持っているHIV陽性者、複合的な身体障害を持つ(場合によっては発症の後遺症であることも)HIV陽性者の問題も同様に存在するわけです。
メンタルヘルスに関連して精神障害や依存の部分はやや先行して語られていて、そのほかの福祉の分野はあまり触れられてこなかった部分だと考えます。

それらは細分化してしまうとまだまだレアなケースかもしれないのですが、「地域福祉」という大きな枠組みで捉えられて経験が共有されることは良いことだなぁと思うわけです。
そして、山内さんが「福祉施設が陽性者を自分たちのクライアントになりうる人々として受け止める」という、これも当然のことを「当たり前ですよね」で終わらずにきちんと分析されていたことが印象的でした。
陽性者の受け入れまでに福祉施設の中で現れる5段階のステップを分析されていたのですが、以下のようなものでした。
−−−−−ーーーーー
1 いきなりのエイズ
2 現場のたな卸しと整理
3 社会的使命による原動力
4 場の立ち上げと現場の納得
5 サービスを構造化する
ーーーーー−−−−−
中でも3番目のステップである「社会的使命感」と「現場の納得」を重要なポイントに挙げられていました。

受け入れを打診されたときに、まず打診された人が「社会的使命感」として受け入れを前向きに考えたとして、その次の「現場の納得」にこぎつけるまでが一番大変だという点で、医療側の岡本さんと完全に一致していたように感じられたのです。
岡本さんのほうは、「キーパーソンの心が折れないように支える」と表現されていました。

例えば、受け入れを検討するに当たって、施設長などがまず受け入れを検討することを決めて、施設のスタッフ会議や、医療と福祉が同席してのカンファレンスが実施されるわけですが、この場で現場の猛反発に合う、という事例が多々あるのだそうです。それは理解不足から来る根拠の無い不安などによるものなのでしょうが、知識を与えただけでは解消されないことがエピソードとして示されました。
福祉の人は困っている人には常に救いの手を差し伸べるだろうという理想的な福祉像はあっさり崩壊し、それぞれが現実的な解決策・・・受け入れるという解決策も受け入れないという解決策も起こりえますが、それをめぐって対立する構図になるという実例でした。

ところで、ある調査では、医療・福祉職にまとめられていましたが、就労中の陽性者のアンケートで10%くらいがこの職種にあると回答していました。つまり福祉施設にもある程度の陽性者が職員として入っているということです。必ずしもカムアウトを伴わない形で。
実は福祉の現場の理解ってそちらの意味でも重要で、例えばこの現場が猛反発しているカンファレンスに、職員の一人として陽性者が同席していたらどうでしょう。とんでもなくいたたまれないことは間違いないです。あるいは同僚の態度にキレてしまうかもしれない。
でもその場の勢いでのカムアウトとかは余計な混乱を招きそうですし、避けて欲しいと思います。
受け入れとしても、また働く場としても、本来福祉の職場ってもっと陽性者が理解されてしかるべきなのだと思うのです。

その一方で、福祉業界にいる立場としては、じゃあHIV、せめて免疫機能障害について学ぶ機会ってどのくらいの頻度で提供されるのか、と考えると、まあ全然無いよね、って思ってしまうのが実情なのです。現場は実務でいっぱいで、研修の時間は決して多くありません。
エイズが世の中に登場して30年、というフレーズは学会中なんども使われましたが、この30年の間、HIV/AIDSの問題は医療の内側にいる時間が長すぎて、福祉の世界ではまだ新しい課題のままなのかもしれません。
そのタイムラグを埋めないままに医療が福祉の世界にアプローチしても壁は高いのだろう、と思います。
そして医療側も福祉側も、もしかしたら当事者も、その壁をどうにか低くする努力をもっと重ねなければならないのだろうと思います。

などという語りも理想ではあるのですが、シンポジウムの中では、年齢層により受け入れへの前向きさ・後ろ向きさに違いがあるという話も出ました。
これはおそらく、30年前のエイズ報道から、日本にエイズが上陸してエイズパニックを引き起こしたあたりの記憶があるかどうかなのだろうと思います。
反対に、若い層では意外と抵抗が無い。このことは僕も大学の授業にゲスト講師として呼ばれたりする中でも実感していることです。

これから福祉の世界の担い手になる人たちに、福祉系の大学などの教育の場で、もっとHIVのことを伝えていく必要があるのだろうな、と自分の中ではまとめました。
ボランティア活動とは違う形で自分にできることも、より具体的にためして行くべき時期なのかもしれません。

学会報告はあと2回くらい続きます。
学会以外にも報告したいことがたくさんあるのですが、果たして年内に終わるのか・・・・(苦笑)。
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2011年02月28日

ブログのサイドバーにHIVの正しい情報があるといいねとか。

なんとあっという間に2月が終わりです。全く時間が過ぎるのは早いですね。
今月は、前の記事でお知らせしたICUのセミナーでちょっと語ったり、ボランティア関係でもこれまでは参加しなかった都内東部のゲイバーを訪問する活動に参加したりして、あと確定申告などもあって本当にばたばた。
おまけにこのところ寒暖の差が激しくてさらに花粉と言うことで、体調も微妙だったり。
でも来月は中旬には札幌へ所要で行ってひげ男爵のスープカレーを食べるなどのイベントもあるのでこんなところでダウンするわけにはいかないのです。

さてそんな中、僕も裏方のお手伝いをしている、HIVマップではちょっとした企画が進行しています。

HIVマップオリジナルバナー募集のお知らせ

HIVマップは、僕のブログに出入りされている方の中には以前からご存知の方も多いと思いますが、ゲイ・バイセクシュアルの男性を主なターゲットにしたHIVの情報サイトです。
これは、エイズ予防のための戦略研究という、研究グループによって作られたサイトなのですが、この研究班は今年度がラストイヤー。しかししっかり作ったこのサイトを研究班の活動が終わるからって閉じるのはもったいないね、むしろ今後も活用して欲しいよね、という声があり、ゲイ・バイセクシュアルの方のブログのサイドバーなどにバナーを置いてもらえたらいいね、となって、でもブログはいろいろなデザインがあるからバナーもいろいろ選べると楽しいんじゃないかなってことで考えられたちょっとしたキャンペーンがこのオリジナルバナーの募集なのです。

もうしばらくの間募集は続くようなので、イラストや写真が趣味の方からプロの方まで、ぜひぜひご参加いただければなって思います。ギャラリーページを作るか何かで応募作は一堂にお披露目となりますので、コンテストではありませんから、気軽に、無理の無い範囲で送っていただければと考えています。


今月もなんだか告知になってしまいましたが、来月になればイベントあり札幌行きあり、後半には某社会貢献ユニット関連の展覧会もあります。また告知も出します。

そうそう、この間の週末には、花見のためのスイーツもオーダーしてきました。
春ももうすぐですね。
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2011年01月30日

仕事もボランティアも今年僕が進む道の上にあるとか。

今年に入ってからなかなかブログの更新もできませんでしたが、ようやく初めての記事になります。
今年もよろしくお願いします。


さて、各地で寒波だ大雪だという状況ですが、最近僕を悩ませるのはなんと言っても静電気。
異常に乾燥した日々が続いた成果、どうも例年をはるかに越える静電気に悩まされています。
何が嫌って、髭が逆立って揃わないことなんですが、花粉対策も兼ねてそろそろ少し短めにしていかないといけないかなって思っています。
こんな時期に限っていろいろな人に会うイベントもあって、タイミングを見計らっています。

HIV関連のイベントは、とりあえず2つ+毎月恒例のLiving Together Loungeです。

・『HIV陽性者による第24回日本エイズ学会参加報告会』
日時:2011年2月5日(土)14:00 〜 16:00
場所:R3C貸会議室・セミナールームA(渋谷区代々木2-4-9 NOF新宿南口ビル4F)

これは毎年行われている、日本エイズ学会にスカラシップを得て参加した陽性者の方が自分の視点から学会の報告をするというイベントです。
詳しくはこちら。
http://www.ptokyo.com/scholarship/aboutscholarship.html#reporting

・ジェンダー研究センター・ANT 304 J/E:民族学地域研究 共催セミナー
HIV/エイズを考える −病の他者化への抵抗−
日時:2011年2月10日(木)13:15〜15:00(Super 4)
場所:国際基督教大学 本館316
言語:日本語(同時通訳なし)
予約不要

こっちはまさかのワルダクミ・メガネーズが背後で暗躍しているとかしていないとか(謎)。
詳しくはこちら。
http://web.icu.ac.jp/cgs/2011/01/20110210.html

HIV関係の活動を始める少し前に僕が興味を持った学問が「医療人類学」でした。大学時代、学部で人気のあった一般教養科目の文化人類学は概論しかやらないので嫌いだったけれど、医療人類学は今も面白いな〜と思って、何かの機会にきちんと勉強したい学問です。
そんな方向のイベントで、この日は僕は休暇を取得しているので、ちょろっと参加してくるというわけです。


そんな感じで今年も仕事とボランティアを両立しながらの日々がすでに始まっているわけですが、完全に別個ではなくて、それぞれで得られた学びが相互に役立つような形を目指していきたいなぁと思っております。

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2010年12月19日

今後重要度を増すはずのエイズ学会レポート薬物編とか。

この週末を使ってのラストスパートで、5本にわけて書いてきた学会レポートもなんとか学会終了後1ヶ月経過する前にアップできました。

学会誌や配布物.jpg

実は学会の配布物が僕の部屋の中に産卵した状態はまだ続きますが(爆)。


最後に取り上げるのは、薬物依存症のシンポジウムと、関連の深い精神科の医療連携です。これはこのところ急速に重要性がうたわれてきた(実際には前から問題だったわけですが)印象がある話題です。
もう一度だけ長文にお付き合いください。


薬物などの依存症、そしてメンタルヘルスに関しては、今回は2つ重要なセッションがありました。初日のシンポジウム「薬物依存とHIV」、そして最終日の共催セミナー「HIV陽性者を巡る地域支援の連続性」です。

前者は、そもそも薬物依存について知ろうというセッション。国立精神・神経センターの和田先生からまず薬物依存とは何なのかという点が非常にわかりやすく説明されました。

大雑把にいえば、まず薬物を使用する「薬物乱用」があり、その結果脳が薬物を求める衝動を自分でコントロールできなくなったときに「薬物依存」であるということです。
まず「薬物乱用」と「薬物依存」と「薬物中毒」の違いについての解説がありました。
「薬物乱用」は使う行為のことで、1回でも使えばそれは「薬物乱用」であるそうです。ですのでその行為をとらないように警察が取り締まります。そうして服役などにより薬物から引き離して対処します。

しかし「薬物依存」の段階に進むと、薬物を探し求めるという行動が自分で抑制できなくなります。ここで大事なことは、それは脳の問題だと言うことです。薬物依存が脳の問題である以上、それは「治療」の対象であり、なおかつ完治はしないそうで、回復のためのプログラムを使用して日々薬物探索行動を抑え、改善に努めることになります。しかし日本など薬物に関して法規制が優先される国では治療ではなく「処罰」が与えられてしまいます。そして刑期を終えて出所するけれど、脳の症状は改善していないので再び薬物を求めて再犯となる、以下繰り返し、ということだそうです。

「薬物中毒」は幻覚などの身体に影響が出た段階です。この「薬物中毒」は治療ができます。しかし治療しても「薬物依存」の状態に戻ると言うことです。このあたり実はHIV感染とエイズ発症の関係にもちょっと似ているかもしれません。

この「依存」をどうにかすることが最大の問題だと言うことになります。

今回はダルクスタッフの方(ご自身も当事者)と当事者の方も登壇し、ダルクの説明や回復のためのプログラムについても話がありましたが、医療少年院などではそうしたプログラムが一部実施されているものの、必要な人すべてに提供されているわけではないことも語られました。ただこうしたプログラムを受けると、ダルクのスタッフとの間にコミュニケーションが生まれ、出所後にダルクにつながり継続したプログラム参加がスムーズにいくことがあるそうです。

先日NHKの番組でアメリカのドラッグコートの様子をたまたま見たのですが、裁判所が薬物使用者を回復プログラムにつなげる働きをすることで再犯率を減らしているそうです。まずはそうした「治療が必要」という認識を広げていくことが大事であると同時に、HIVにも感染している薬物依存の方は「2つの疾患を抱えている」ということをしっかり受け止める必要があると思いました。
そう考えると他科診療の問題がやっぱりこの分野に浮上してきて、拠点病院は薬物依存症の治療ができるのか、という問題もあるように感じます。

質疑応答では「ハームリダクション」という単語が出てきまして、本題ではないのでさらっと流す形になってしまいましたが、今後この言葉はHIV関連のシンポジウム等で耳にすることが多くなりそうです。一応解説ページもご紹介。

http://www003.upp.so-net.ne.jp/shout/harmreduction.html

ドラッグコートができる前は日本とアメリカが断固反対していたハームリダクション、現在は日本とロシアが断固反対しているようです。


余談ですが、当事者の方は砂川秀樹さんらの著書「カミングアウト・レターズ」を服役中に読んで支援団体につながったとか。実は今回の学会、砂川さんのパートナーさんが3日間参加されていて、かなりの時間僕と一緒にいたのですが、この時間帯は裏番組のセッションに行ってしまっていたのです。後からお伝えしたら大変感激されておられました。


もうひとつの最終日のセッションですが、内容に入る前にひとつ。
このセッションは手前のセッションが押した結果なんと30分遅れてスタートとなってしまいました。学会ではもはやあり得ないレベルの遅延ぶりです。
ちなみに手前のセッションは一般演題の「分子疫学」(基礎分野)だったのですが、さらにその手前の「宿主因子」(やはり基礎分野)からもしかしたら遅れていたのかもしれません。詳細は分からないのですが、危うく垣根を超えて一触即発になるところでした(苦笑)。

こちらのセッションはHIV診療を行うクリニックである新宿東口クリニックの山中院長と、同じくしらかば診療所の精神科医の平田先生、東京女子医大のナースの岡野さん、町田保健所の向山さんという、まさに現場からのパネリストが揃っておられました。

ここで出てきたキーワードは「リエゾン精神看護」。

リエゾンとはフランス語で「つなぐ」とか「橋渡しをする」という意味なのですが、東京女子医大ではメンタルヘルスに関する部分をHIVの専門看護師だけでは担いきれないところもあり、精神科のリエゾン精神看護を勉強した専門ナースが協力して、精神科との連携をはかっているとのことでした。
精神科はまだまだ敷居が高く、患者自身が抵抗があると言うケースも多いようですが、本来薬の問題さえ相互に理解されていれば、治療に際して出血をともなう科ではないので連携しやすい領域、という指摘がありました。また大病院の精神科ではなく町のメンタルヘルスクリニックのほうが症状からも通院環境からも適している場合が多いので、あとはどのようにHIVへの理解を深めていくかがポイント。ただし現状では医療者個人のネットワークによるところがあるようで、このあたり町田保健所の向山さんからは公的な診療ネットワークを意識した「まだまだ保健所にできることがある」という心強い言葉が聞かれました。
全体を通して見ると、精神科の治療に関する知識もある程度はHIV専門医もあったほうが良いが、専門領域に踏み込むのではなくあくまでも連携していくことのほうが重要との印象がありました。ただし今回は首都圏の方での話でしたので、地方に行くと若干事情が異なる部分があるかもしれません。診療科が何であっても「近所の町医者へのカムアウト」への抵抗感は残ると思いますので。


以上で今年の日本エイズ学会のレポートを終わります。
ずいぶん長くなってしまい、また最終アップまでの時間もかなりかかってしまいました。さすが日本最大のゲイイベントは書くことが多すぎますね(ゲイイベントではありません)。

来年は何とエイズデーをはさんだ11/30〜12/2という強行日程(汗)で、新宿のハイアットで開催されます。でも仕事帰りに一般公開シンポジウムに行くチャンスは増えるかもしれませんね。
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2010年12月18日

どうしても松山に注目してしまうエイズ学会レポート予防啓発編とか。

少し間が空きましたが、学会報告シリーズの第4弾は社会分野からMSM(男性とセックスする男性)を中心に予防啓発についての話題をピックアップします。
例によって長文ご容赦ください。


今回注目していた「地方都市における啓発プログラム」のシンポジウム。いつもこのてのシンポジウムは、他の重要課題と同じ時間に組まれてしまうのですが、今回はしっかり参加することができました。

今回パネリストとして発表を行ったのはWAVEさっぽろやろっこ横浜CruiseHaaTえひめの各団体で、座長は「エイズ予防のための戦略研究」に関わっている東京と大阪の二人という構成。
非常に馴染み深く、またどこかでお見かけした顔が並ぶというシンポジウムでした。
ちなみにこのシンポジウム以外の演題では福岡のLove Act Fukuokaや沖縄のなんくる、また名古屋のANGEL LIFE NAGOYAのイベントとしてNLGRもMSMなどの演題で取り上げられていました。

各団体で行政との連携について何かしら話があったりしたのですが、やろっこは仙台市とは関係が良いが宮城県とはまだ連携は深くない。HaaTえひめは松山市とも愛媛県ともうまいことやっている。この違いがひとつのポイントになっている気がしました。つまり、「その団体はどこまでカバーするのか」ということです。
市から助成を受けると、それは市のために使うお金、ということになります。しかしながらMSMのコミュニティが必ずしも行政区分に合わせて組まれているわけではありませんから、NGO側が感じている必要な規模と、行政が手を出せる規模とが食い違うことはあります。

そしてそれ以上に困難さを醸し出すのは、「ゲイ向けの活動に税金から金を出す」ことについてはまだ抵抗感が根強く、1つの自治体を説得するだけでも大変なのに市の次は県、あるいは隣の市、といったことをしていくのはNGOの負担がとても大きいということです。実際のところ、やろっこさんはなかなか難しい中活動している様子がうかがえました。
あと、個人的には、地元の方はどうかわかりませんが、遠目に見ているとやろっこの活動は見えるんですがその母体である東北HIVコミュニケーションズの活動が同時に見える、ということが少ないんですよね。もっと予防と支援の両方の部門を持っていることの強みが見えると良かったなぁと思いました。これは僕自身の活動への反省でもあるのですが。

さて、愛媛の状況は全く違います。HaaTえひめのサイトではこんな紹介がされています。

◆◇◆◇◆
HaaTえひめが実施する事業は、行政などからの公的資金や個人からの寄付金などによってまかなわれています。
◎愛媛県エイズ予防啓発委託事業(H19年度〜)
◎公益財団法人 トヨタ財団 地域社会プログラム(H22年度〜)
 【※松山HIV/AIDS予防啓発コミュニティ協議会(プロジェクト実施主体:HaaTえひめ)】
◆◇◆◇◆

松山HIV/AIDS予防啓発コミュニティ協議会には市からも県からも参加がある上に、HaaTえひめが主体となって協議会を仕切っていて、協議会の名前でトヨタ財団の助成を申請したら通りました、ということです。
こんな展開は日本では都市部だってありません。自治体の規模に対して提供できる取り組みの大きさと言う点では、松山は日本でも有数の成功事例だと思います。

ただし、別の意味での困難さが松山にはあります。四国には陽性者支援団体が無いのです。一番近くて有名どころと言うと瀬戸内海の向こうの広島になります。質問を投げてみましたが、やはりこの部分は課題としてどうしても残るようでした。
とはいいつつも、12月5日にはLiving Together Cafeとして陽性者の手記のリーディングやライブのイベントを開催して、Living Togetherというメッセージを打ち出す試みもはじめられたようです。35人参加したとスタッフさんからツイッターで教えてもらいましたが、なかなかの集客じゃないでしょうか。

シンポジウムの後で座長の方とも話をしましたが、都市部は団体の規模もあるけれどもMSM人口やMSMの中での多様性も幅広いので、都市部は都市部で問題を抱えているし、地方の取り組みから学ぶことがたくさんあるので、今回は地方を取り上げたけれども、都市部の活動と課題にフォーカスしたシンポジウムもしたいね、なんて話をしました。


学会の期間中、いくつかのセッションでは、日本人成人全体のHIVの罹患率は0.02%とかだけれども、MSMの間ではMSM人口をどのくらいに見積もるかによるけれど1%は超えているのではないか、という話が出ていました。実際にMSM向けの検査イベントや各種調査でも、数字はばらつくものの、MSMはやっぱり罹患率の高い層。しかしその一方で、MSMを前面に出すと公的予算がおりにくかったりする現実もあるわけで、そのあたりの工夫はもちろん、行政に関わる人でMSM向けの活動に熱心な方のメッセージが伝わることも大事なんじゃないかな、と全体を通じて感じました。今回は神奈川の保健所勤務医である中澤先生や、「エイズ予防に関する戦略研究」が今年度で終了するにあたって次年度以降の事業化などに言及された名古屋市立大学の市川先生あたりがMSM関連のセッションでたくさん発言されましたが、それこそ仙台や松山、福岡などの行政の方の話も聞きたいなぁという想いが強くなりました。


さてまた文章ばかりなので、最後にちょっと学会のグッズなどもご紹介。
製薬会社がブースや共催しているシンポジウムなどの場でグッズを配るんですね。


ボールペンとトートバッグ.jpg

アボットジャパンのトートバッグはロゴが控えめで使いやすい感じです、手に持っているのはヴィーヴィヘルスケアのボールペン。

レイアタッツフォルダ.jpg

これちょっと凝っています。ブリストル・マイヤーズのセミナー資料なんですが・・・・。

レイアタッツフォルダ見開き.jpg

開くとレポート用紙つき。学会っぽいですよね。

ちなみに、違う意味の学会グッズとして、某似ぐま絵師が上記のシンポジウムのパネリストの似ぐま絵を描いていて、シンポジウム後に手渡していました(それはグッズなのか・・・・?)。
posted by sakura at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | ボランティア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月10日

ようやく取り上げられたエイズ学会レポート陽性者パートナー編とか。

エイズ学会のレポートを、2つ前の記事から書いています。

日本エイズ学会でも、陽性者本人ではなくパートナーへの告知や支援については演題として取り上げることがあまりなかったのですが、今回、ワークショップとして「パートナーへの告知と支援」が独立したセッションとなりました。
このブログでの学会レポートでも、独立した記事にしたいと思います。

僕自身はこのセッションが生まれたことをとても重要に感じていました。そもそも、陽性者本人に比べてパートナーへの支援が手薄なのは明らかで、逆にここが手厚かったら、告知直後に別れるカップルも少なくなったりするんじゃないかなぁ、異性愛の方で婚活で苦労されている方も減るんじゃないかなぁ、なんてことも思ったりするわけです。

しかしこのセッションは、ある先生の言葉を借りれば「本学会で最も議論を巻き起こしたセッション」になったのです。
なぜそうなったのかを僕の所感や補足を交えて書いていきたいと思います。

ワークショップと言うのは、同じようなテーマの演題を集めることでより深くその問題を考えようと言うセッションです。別にグループ学習とかがあるわけではないのですが、連続して聴くことで、特定のテーマをいろいろな角度から学ぶことができます。
「パートナーへの告知と支援」という形でまとめられていますが、「告知」と「支援」はある意味相反するところがあります。パートナーへの告知と言うのは今回の学会発表においては「周囲の人の理解」というような意味合いではなく、「陽性者のパートナーと言う、ハイリスク層への検査勧奨」という意味でした。これは当たり前ですがパートナーへのカミングアウトを意味しています(カムアウトせずにパートナーに検査に行かせるテクニックを持っている方もいるかもしれませんが)。
しかしながら、陽性者支援の現場ではカミングアウトについては極めて慎重です。特に陽性告知直後に陽性者が混乱した状態でカミングアウトすると、パートナーも一緒に混乱して収拾がつかなくなることはよくある話です。
というわけで、今回のワークショップは、最初から、公衆衛生を担う保健所や医療サイドは、パートナー全員にすみやかに検査を勧めてほしい、しかし支援のサイドはそんなに簡単に言わないで、という対立構造がなんとなく描かれているようなワークショップだったのです。

そして予想通りと言うか予想以上の議論が勃発したわけなんですが(苦笑)。

ワークショップでは保健所での検査勧奨状況、大規模医療機関で調査した患者のパートナーへの告知状況について発表があり、最後に陽性者のパートナーからの電話相談の内容についての分析を発表を支援団体がしたのですが、保健所と医療機関の発表には実に10人以上が質問や意見を述べるためにマイクサイドに立つという活発さ。こんな演題はなかなかお目にかかれません。
活発さと言うと聞こえはいいんですが、その内容は概ね反論や厳しいご指摘系だったのですけれど(爆)。

まず保健所の方の発表後のやりとりで明らかになったのは、そもそも「パートナーへの介入が必要」以上の指針が何一つないという事実、そして「パートナーの定義」という点さえ現場での判断に任されているとみられる点でした。

公衆衛生側で根拠としているのは「性感染症における特定感染症予防指針」です。これはクラミジアなどの指針ではありますが、HIVについても連携することが明記されているので、HIVにおいても適用されると考えて良い指針です。
http://www.jfshm.org/std/houritu/12-2-2/r-main.html
この中からこの記述がある部分と、すぐその次にある項目を抜粋します。

◆◇◆◇◆
第二 発生の予防及びまん延の防止
三 検査の推奨と検査機会の提供
(前略)
また、都道府県等は、住民に対して保健所における検査の受診を推奨するとともに、受診しやすい体制を整えることが重要である。また、様々な検査の機会の活用を推奨していくことも重要である。
なお、検査の結果、受診者のパートナーに感染の可能性がある場合は、パートナーの検査も推奨し、必要な場合には、医療に結び付け、感染拡大の防止を図ることも重要である。
さらに、国及び都道府県等は、性感染症の検査の実施に関して、学会等が作成した検査の手引き等を普及していくこととする。

四 対象者の実情に応じた対策
予防対策を講ずるに当たっては、年齢や性別等の対象者の実情に応じて追加的な配慮を行っていくことが重要である。
例えば、若年層に対しては、(中略)
また、女性は、感染しても無症状の場合が多い一方で、感染すると慢性的な骨盤内感染症の原因となりやすく、次世代への影響があること等の特性があるため、女性に対する普及啓発は、対象者の意向を踏まえるとともに、対象者の実情や年齢に応じた特別な配慮のほか、性感染症を女性の性と生殖に関する健康問題の一つとしてとらえるような配慮を加えることが重要である。
◆◇◆◇◆

この第二項の三をもとにパートナーへの検査を推奨しているわけですが、支援側としてはむしろ第二項の四に書いてある対象者の実情に応じた追加的な配慮を期待したいわけです。実例が若者と女性になっているとはいえ、理念としては個々の事情を考えよう、まして偏見の残るHIVに関してはさらに個人の事情をきちんと踏まえよう、という対応が求められるのはまあ自然です。

まして保健所と言う告知の場での話となると、陽性告知の流れの中で「パートナーさんにも検査するように言ってね」と伝えると言うことです。告知直後の陽性者に対しての要求としてはいかがなものでしょう。
で、よく考えてみれば、保健所だって陽性告知後のカウンセリングでは、告知直後の混乱した状態でのカミングアウトはお勧めできない、と伝えることもあるはず。現場の保健師さんにとってはどうしろと、という話です。
発表者の保健所の方も「介入しろと言うこと以外何も決まっていない」と明言し「一定の方向性を決めることが大事」とした点は潔かったと感じました。実際「決まっていないことが確認できて良かった」という声もありました。
その方向性を決めるにあたって、支援者の意見が加わっていれば良いのではないかと思います。

では、患者とある程度長くお付き合いすることになる医療機関のスタッフが、タイミングを見計らって陽性者にパートナーへ検査を勧めるよう伝えるのがいいのかな、ということになります。しかしこちらはこちらで看護師の方の発表の後に大議論。
その原因は、「パートナーがいる(いた)人全員が、感染リスクのあったパートナー全員に検査を勧める」というのが目標になっているようなフシがあったことが大きな要因であったように思います。

さっそく「陽性者がパートナーに告知することを拒否する権利は担保されているのか」という質問がありました。
性的パートナーには元彼・元彼女が当然のように含まれていて、なおかつその関係が別れた後の現在も良好であるとは限りません。極端なことを言えば、「全員が全員に伝える」前提では、DV被害でパートナーから逃げてきた人であってもそのパートナーにコンタクトしなければなりません。
また、場合によっては傷害事件として訴訟沙汰になるリスクもあります。リスクのあるセックスを選んだのはどちらか片方ではなく二人であるケースも多いと思うので、性感染症を立件するのは少々微妙だと思うのですが、誰からうつされたのかに過敏になる方も当然います。
海外では、性的パートナーへの告知は医療機関などが代行するところもありますが、個人情報の問題もあります。セクシュアルマイノリティーにとっては尚更でしょう。
そもそも全員にっていう発想から脱却したほうが良いのではないかとも感じます。

こちらでは僕も一つ質問をしました。
僕からの質問は、調査結果に対して極めてシンプルな疑問のつもりで発言しました。調査結果ではこうなっていたのです。

◆◇◆◇◆
特定の性的パートナーがいた175人を対象に調べたところ、
パートナーに告知できている人が130人。
告知できていない人が45人。
◆◇◆◇◆

一見きれいな数字ですが、よく考えると「・・・・あれ?」と思いませんか。
今のパートナーには言えているけど元パートナーには言えていない、という人はゼロなのでしょうか。
セフレが二人いるなど、特定のパートナーが複数いる人がいてもおかしくありません。全員に言えているか全員に言えていないかどちらかなのでしょうか。

この点を指摘したら、あっさりと「確かに特定のパートナーが複数いる人はいました」との回答が。この回答でちょっと僕もヒートアップすることになったのですが(汗)。

この話は、前述した予防指針にもあるように、そもそも「パートナーへの予防と検査」のためのものなので、公衆衛生的な考えに立ったとしても、「ハイリスク層にどのくらいアプローチできているのか」の調査結果になっていません。この数字だとパートナーの75%くらいは陽性者から告知されているみたいですが、告知できていない人の中に何十人もセフレがいる人が数人いれば数字はひっくり返ります。そこが反映していない調査は公衆衛生的にもダメだろうと思うのです。
結局、この方向だと「パートナーに伝えることができない、という陽性者の伝えられない原因を調べてみんなが伝えられるようにしよう」という流れになるのではないかと懸念してしまいます。DVの例は極端だとしても、「今のパートナーに配慮して、元彼には連絡取りたくない」なんてのは同性愛異性愛関係なくありがちな恋愛模様として想像できるはず。また自分は元パートナーの連絡先は携帯などから抹消していて、共通の知人を介してでないと連絡できない、なんて場合もあるのではないでしょうか。

ともかくも、この分野は「全くまとまっていない」ことが明らかになったので、来年以降も白熱した議論を期待したいところです。


そういう流れが終わって、最後に陽性者のパートナーの方からの電話相談の内容の発表。多様な相談内容を丁寧にこんなこともある、あんなこともあると紹介しつつ、陽性者のパートナーの方が陽性者の方を伴わずに受けられる支援リソースが少ないということを指摘されました。
発表者の方は明らかに緊張していました(爆)。場の空気と言うものは後をひくものです。
この発表は支援の側からですので、大議論などもはや起こるはずないのですが、発表者の方が「あんなに緊張したことはない」と仰っていたのが印象的でした。
なんて書くと「お前もその一因を作っただろ」とか言われそうですが・・・・でも・・・・あれは関西の支援グループのKさんがガチだったのがイケナイのっ(責任転嫁)。


画像なしで長文になってしまったので、おまけで僕がどんなスタイルで学会に参加しているかでも。

よくある学会スタイル.jpg

だってエイズ学会だもん(酷いオチ)。
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2010年12月08日

まさしく垣根を超えた感のあるエイズ学会レポート臨床編とか。

前の記事に続いてのエイズ学会レポートです。
今回は臨床分野なのですが、ここでは思いがけない展開がありました。


臨床分野と言えば、症例検討とか薬の使用実績とかそんな話がまあ多いのは普通です。
しかしながらHIVは新薬が毎年のように出てくる一方、まだ20年とか服薬するとどうなるのかといった長期服薬の影響は未知数です。そのため、毎年のように薬に関しては新しい報告があります。

中でも、画期的な報告が、薬の組み合わせについて。
HIVは基本的に3種類の薬剤を一度に飲みます。HAART(ハート)療法と言われていますが、これは効き方の異なるタイプの薬剤を組み合わせると、薬に対してウイルスが耐性を持つ可能性がグッと下がるので効果が持続する、というものです。
効き方が違う組み合わせ、ということで、抗HIV薬は「キードラッグ」と「バックボーンドラッグ」というふうに分類しています。バックボーンのほうは1つの薬の中に2種類の薬剤が入っているものが主流で、その薬と、キードラッグを何か、という組み合わせです。
さて近年、これまでの薬とは全く異なる効き方をするアイセントレスという薬ができました。これは効果が高い薬として注目を浴びていたのですが、もう一つ、この薬はキードラッグでもバックボーンドラッグでもどちらでも使えるらしいことがわかってきたのです。
これは使える薬の組み合わせパターンがかなり増えるという発見で、重要な意味があります。ただし難点はアイセントレスは耐性がつきやすいうえに1日2回飲まなければならないということ。ですがアイセントレスと同じ効き方をする薬が増えるとメリットが大きいこともわかりましたので、次の新薬開発につながる発見と思われるのです。

患者の視点では、これまではバックボーンは多くの場合「ツルバダ」という薬か「エプジコム」という薬で、この薬の副作用がひどかったりすると薬の組み合わせが急に残り少なくなってしまっていました。特に日本で一番多く処方されているツルバダによる腎障害が見られる方にはたいへんな朗報と考えられています。
その腎障害ですが、特に体重が50kg以下の方がリスクが大きいとか。でも男性同性愛者中心の患者構成である日本においては、比較的体重がある人のほうが多いでしょうから、高脂血症や骨密度の低下のほうが重大な関心事になっていくように思われました。

最終日のランチョンセミナーでは、医師の見解が分かれる場面がありました。高脂血症やコレステロールの問題に対して、さらに処方を追加するかどうかです。これには東京の国立国際医療センターは比較的積極的、このランチョンの発表者である九州医療センターの南先生は消極的な態度でした。
薬の副作用を薬の追加でどうにかするのはおかしいのでは、と考えるドクターも多いようです。

歯科診療のセッションでは、各地でHIV診療をしてくれる歯科医師のネットワークを作ろうと尽力されている中田先生から、大阪の歯科医師会にチクリと苦言が。相当難航した模様ですが、このネットワーク作りの成果はwebサイトで公開する方針で、現在制作途中だそうです。

歯科というのは、HIVを診るレベルの病院においては「口腔外科」になっていることが多く、もともと領域が違うんですね。なので開業医の歯科の先生にHIVの方の診療をしていただきたいところなのですが、どうしても血液と縁のある疾患に対する理解がすすまないようです。これは社会分野とも絡んでくるのですが、かつてHIVの妊婦を診ていた産科が風評被害を受けることがあり、それが二十年以上経過した今でも生きているのかもしれません。

もう一つ、前の基礎研究のレポートでも取り上げたプレナリーセッションでも垣根を超えたところがありました。
プレナリーはHIVに関わる全ての人向けに発信されるプログラムなので、今回臨床の岩本先生が学会長なのですから当然臨床のプレナリーは学会長の意向がかなりダイレクトに反映されると思っていたのです。そして選ばれたのは、最新の治療は初日だけ、2日目は看護からセクシュアルヘルスの支援、そして3日目には何とカウンセリングが選ばれました。
これこそ今回の学会のテーマ「垣根を超えよう」を如実に示していました。というのも、エイズ学会では長年カウンセリングは「社会分野」で扱ってきたのです。あえて臨床のプレナリーにカウンセリングを突っ込んできた意味、それはおそらく「チーム医療」ということだと思うのですが、そこで発表者の荻窪病院の小島先生は平然とこう言い放ちました。

「患者が医者には伝えたくないことは、命に関わること意外は我々は患者さんから聞いてもドクターには伝えません」

つまり、医者の意向より患者の意向が優先だと、臨床の現場を代表して言い切ったのです。当たり前のことのように聞こえますが、会場の医師に対して理解してもらいたいこととしてこれを話したということは、再確認すべき大きな課題であったということなのだろうと思います。このほかにも「忙しそうにしている医者や看護師に患者は悩みを打ち明けない」などさりげなく重要なことを言っていました。「暇そうなのも仕事のうち」は名言だと思います。

小島先生がいらっしゃる荻窪病院は、陽性者の出産に関する対応でたいへん有名な病院です。それだけに妊娠中の女性の対応も当然回数をこなしておられるのでしょう。また「研修でゲイの方などのことに触れた後で、研修を受けた人から『で、先生、同性愛はどうやって治すんですか』とか聞かれるとガッカリです」というような発言もありました。先生は「自分の発表はデザートのようなもの」と言っておられ、たいへん軽妙なトークを披露されて会場を盛り上げていましたが、それらは様々な経験に裏打ちされたものであることも良くわかりました。
3回のプレナリーセッションの一番最後が小島先生だったのですが、してやったり、というところではないでしょうか。


おまけで会場の夜の様子を。

夜の会場ゲート.jpg

夜の中庭.jpg

ちなみにサンタクロースのイルミネーションです。決して泥棒ではありません(爆)。
そうそう、このイルミネーションがある場所は、日本庭園のすぐ脇です(カオス)。
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2010年12月07日

頑張って難しい話も聞いてみたエイズ学会レポート基礎研究編とか。

エイズ学会から世界エイズデーとその後の週末も過ぎて、ようやく少し落ち着きました。
これまでの年に比べても、今年はいろいろな活動もあってバタバタしていた感じがします。

さてこのブログでは恒例なのですが、日本エイズ学会のレポートを何回かにわけて書いていきます。
去年までは日ごとにレポートしていたのですが、今年は形式を変えようと思います。
というのも、今回のテーマは「垣根を超えよう」。エイズ学会は基礎研究、臨床、社会の3つの分野からなっているのですがその垣根を超えることに今回は主眼が置かれました。
そこで、元来社会分野の関係者である僕が見た、基礎研究と臨床に関する話題について、そしてもちろん社会分野の話題について、それぞれジャンルごとに書いていこうと思います。

というわけで最初は基礎研究。
一番縁遠い部分をレポートします!


今回の学会の会場は、高輪プリンスホテルと隣接するさくらタワー。
11月末ということで紅葉が残り、どちらの建物も風情のあるたたずまいでした。

さくらタワーエントランス.jpg

日本庭園から高輪プリンス.jpg


さてエイズ学会での基礎研究の発表と言うのは概ね理解しがたく、「なんでこの分野の研究者はヒゲが多いんですかね」とかそんなことばかり気にしていたりするわけですが(また基礎研究者には伸ばし放題なヒゲが多いの・・・・)、今回はプレナリーセッションのおかげで普段は全く関わらない基礎研究の一端に触れる機会を得ることができました。
プレナリーセッションというのは、各分野から代表者が出て、他の分野の人も含めた全ての関係者に、これは伝えたい、ということを伝えるという、全員参加型の大規模セッションです。

初日のプレナリーは国立感染症研究所の武部先生が登場し、まず「分子疫学」からスタート。
分子疫学からみた感染動向の話でした。

HIVに1型と2型(日本では極めて稀)があるのですが、1型の中にさらにいろいろな種類があるんですね。これを「サブタイプ」といいます。

薬害被害者や男性同性間の感染で広がっているのはサブタイプB。
これは欧米型と言われているもので、日本ではほとんどがこれです。

ところが、一部の地域ではサブタイプCRF01_AEが流行している地域があります。
こちらはタイに起源をもち、実際の感染動向と照らし合わせると、比較的異性間の感染が多い地域、例えば長野や茨城などに見られるという特徴があるそうです。

このサブタイプをとらえることで、実際にどのような経路で感染が拡大していると考えられるのかを推測することができます。つまり外国人のセックスワーカーによる感染が一定数いると考えられる、などです。
もちろんこの感染経路は必ずこのサブタイプ、ということはないので、サブタイプを特定されてゲイバレなんてことは無いわけですが、地域での予防の活動をしているグループや、どんな層への予防啓発に予算を多く配分するか悩んでいる自治体の人などには便利な情報が提供されるかもしれません。
逆に、異性愛の感染が目立つ地域では、男性同性間は後回し、みたいな雰囲気が生まれかねないのですが、CRF01_AE以外のサブタイプもいろいろでてきますしサブタイプBもあるわけです。サブタイプが多様であることは多様な感染ルートが存在するということでもあり、むしろ「バランスの良い多角的な予防啓発」が必要とされるということになるのです。

こんなふうに、分子疫学(基礎研究分野)と予防啓発(社会分野)がリンクすることが確認できるのがこのプレナリーセッションのよいところでした。実に刺激的なセッション。これが3日間ですので3回開催されたのです。

2日目は名古屋医療センターの杉浦先生から薬剤耐性ウイルスの動向についてでした。
こちらは薬剤耐性による治療の脱落率は1.5%という数字が出てきました。感染不安の方には「薬を忘れずに飲み続けられるか不安」→「治療が失敗するんじゃないか」→「結局自分は生きられない」みたいなものすごい負の連想をしてしまう人がいるのですが、何だかんだで皆薬は飲むのね、という印象。ただしこれは「病院に来なくなった」人は集計できないので、医療とのつながりが大事だということも再認識させられました。

そしてこの1.5%は先進国の中でも突出して優秀な数字らしいのですが、裏を返すと耐性ができてしまった人に次の一手をどうするか、という点については臨床経験の少ないドクターも多いということ。
また東海地域では感染発覚時から何らかの薬剤への耐性を持っているウイルスに感染している人の割合が他の地域に比べて高めなのではないかと言う調査報告もあり、必ずしも楽観はできないようです。

最終日は東大医科研の俣野先生からワクチンの話。
これは僕もわからなかった部分がそこそこあったのですが、ざっくり言えばHIVが体に侵入したときに感染を成立させないようその活動を阻害する物質、いわば疑似HIV抗体のようなものを体内で発生させるためのワクチンを開発しているという話でした。

印象としては1回打てば確実にというワクチンにはならなさそうだけれども、宗教的にコンドームを使えない地域などではひとつの光になりそうにも感じました。


こうしたプレナリーセッションは、話す側の技量もかなり問われます。まして基礎研究は専門用語がバンバンできてきて一般的な社会分野の人には理解のための足がかりすら見つからないことが多いのですが、今回はそれでも気づきや発見がありました。それは極力難しい用語を避けながらざっくり理解するにはどう考えたら良いかを踏まえて発表された先生のお力によるものかと思います。


こんな調子であと4回くらい続きます(社会分野はさらに細かくいろいろ書きます)。
長文が当面続きますがどうぞご容赦ください。
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2010年11月15日

11月と言えば学会でそれは結局ゲイイベントに近いのではないかとか。

11月です。このブログでは11月といえば日本エイズ学会です。
今年もまたこのシーズンがやってきて、テンションが高いです(苦笑)。

学会の抄録集もこの週末に届きましたが、自分の中だけで大変な盛り上がりをみせておりまして、どのセッションに参加しようかとかいろいろ練っております。
しかも今回が開催場所が高輪プリンスということで、それもまたちょっとアガるってものです。

そんなテンションの上がった状態になると人はどんな行動をとるのか、自分の行動を客観的に振り返って見ますと・・・・。


■「新しいメガネを作りたい病」が再発。
さすがに散財すると大変なので、昔使っていたメガネを発掘。今見るとショーン・レノン風。

■合併症として「学会にきて行くシャツを買いたい」という衝動が高まる。
しかしそのための店のチョイスとしてSTUSSYは違うだろうということに店内で気づき購入中止。

■学会に来ない人から、特別な情報が入るようになる。
例えば「某先生は先日ラグシャツの上に白衣で仕事をしているのが目撃された」など(爆)。

って、それってプレリュードのときとかとあまり変わらなくないか(核爆)。


今年は24〜26日の開催なのですが、前日の23日は勤労感謝の日で祝日、学会翌日翌々日は土日ということもあって、学会に来られる方の中には長期滞在される方も。
前後のイベントなどでぜひたくさんの方と知り合って、次の活動へのモチベーションにしたいところです。


このブログでもしばらく告知やレポートが続きますが、まあそれもいつもどおりということでしょうか。本当に楽しみです。
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2010年05月31日

月またぎで濃密なイベントウィークとか。

5月が終わります。

ご存知の方も多いかもしれませんが、今日から、NHK教育テレビの「ハートをつなごう」でHIVの特集をやっています。
明日あさっても続くのですが、今日はぷれいす東京の事務所がちらりとうつり、明日か明後日は新宿二丁目コミュニティセンターaktaも、RainbowRingのデリヘルボーイズの皆さんの取材の中でテレビに登場すると思います。
午後8時から30分番組です。来週の7日から9日には、正午から30分再放送されます。

6月と言うのはHIV検査週間や検査月間が行われるので、エイズデーの次くらいにHIV業界はオンシーズンなのですが、今年は、

29日にぷれいす東京活動報告会
30日にLiving Togetherのど自慢
月が替わって4日にThink about AIDS
5日と6日は名古屋でNLGR
6日の夜にはLiving Together Loungeも

とまあ揃いも揃ったという感じなわけです。

・・・・えー、NLGRまでは全部行く予定です(爆)。
さすがにラウンジに間に合うように戻ってくるのはちょいとしんどいわけですが・・・・。
まあスタッフもスクランブル状態なわけですね。

そんな合間に、27日にYO-KINGのソロライブに行ってきました。
もともと真心ブラザーズは好きだったのですが、よく考えるとソロライブは初めて。
もうね、歌もライブもMCも完璧。
もうちょっと頑張るかって気になってしまうから音楽の力は偉大であります。
特にMCでは、好きなことを突き詰めたほうがいろいろやるよりいいという話をしていて、本業も障害者福祉系でがっつりHIVに向き合っている僕としてはちょっと救われた気持ちになったりしました。

NLGRが終わったら、月末にJaNP+の活動報告会を聞きにいって、あっという間にプレリュード、その先には夏のパレードが控えています。
でもなんか今年はそれなりに走れそうな感じです。

イベント会場で僕を見かけたらぜひぜひお声掛けくださいね。
一部の会場ではワルダクミ・メガネーズが揃っているかもしれませんが、大丈夫です、ちょっと会話に割り込まれたくらいで我々の計画には影響ありません(計画って何)。
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2010年04月30日

ちょうど1ヵ月後に向けてラストスパート中とか。

4月末は毎年恒例と言えば恒例なのですが、年間の報告書作りで本職もボランティアもばたばたしています。
特に、ボランティアの年間活動報告書の原稿の締め切りは明日。
昨日今日とシンポジウムに参加したりはしているのですが、合間を縫って書き続けて、原稿のためにたいていのことが後回し。ようやく文章はどうにかなって、あとは画像を入れる場所の指示など細かい作業のみになりました。

毎年この作業明けに、ゴールデンウィーク恒例の土佐入野ツアーが控えているのです。ある意味仕事明けにバカンスが用意されているというのは良いことなのかもしれません。


さて、そんな原稿は、2009年度の活動報告書の一部として、来月予定しているぷれいす東京の活動報告会でお披露目です。
お時間のある方はぜひぜひお越しください。


<以下ぷれいす東京サイトより転載>

ぷれいす東京では、恒例の活動報告会を今年も開催します。部門報告は、それぞれの部門から日頃の活動を現場感覚いっぱいにお届けします。多様なスタッフが各部門から登場し、活動の広がりを感じさせてくれます。
トークコーナーでは、ホームレス支援団体「もやい」のうてつあきこさんをお招きします。当事者とカフェを立ち上げ、さらにフェアトレードによるコーヒ豆を焙煎して販売するというプロジェクトの経験から、援助者、医療者、女性として感じていたことなどをお聞きする予定です。
みなさま、お楽しみに!ぜひご参加ください。

■日時
2010年5月29日(土)
・活動報告会 18:30〜21:00(開場18:15〜)
※どなたでも参加できます。ぷれいす東京の会員・賛助会員・寄付者・ネスト利用者・招待者は無料。それ以外の方は、資料代として1,000円いただきます。

■会場
豊島区立生活産業プラザ「ECOとしま」多目的ホール(8F)
東京都豊島区東池袋1-20-15(池袋駅東口より徒歩7分)

詳細はこちらもご覧下さい。
http://www.ptokyo.com/topics/activitiesreport2009.php
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2010年01月31日

2ヶ月遅れのエイズ学会アフターイベントとか。

今日は、新宿文化センターで日本エイズ学会関連イベントがありまして。
陽性者視点での日本エイズ学会の報告をする会で、加えてスカラシップのこととか、陽性者による学会レポートの冊子が発行されたこととかが話されました。

このイベントは昨年に引き続き開催されたのですが、昨年は平日開催だったのに対して、今年は日曜開催なので参加しやすく、会場はそこそこいっぱいに。
うちの団体関係者はもちろん、知っている人も多数。学会のアフターイベントのようだな、と思いました。

さて、日本エイズ学会は陽性者自身も多数参加する学会なわけですが、こういう医療系学会は日本にはほとんどありません。
最近日本がん学会も同じような取り組みを始めたのですが、エイズ学会はその点は先駆的な学会なのです。

以前にも書きましたが僕は睡眠時無呼吸低呼吸症です。睡眠に関する学会には日本睡眠学会と言うのがあるのですが、この学会は会員になるための申込書には所属を書く欄があり(一患者に所属はありません)、サイトの挨拶でも学会員が一丸となって睡眠に関する研究に寄与します、的なことがかかれていたりして、それはそれで素晴らしいことなのですが、やっぱり研究者と患者の間には線が引かれているのも事実です。
なので、日本エイズ学会は僕にとってはとても魅力的な学会なのです。
ちなみに、実は、こっそり学会員として登録しています。
ボランティア関係の皆様には内緒です(書いた時点でカムアウト気味)。

そんなイベントが終わって、それと共に1月終了。
早い、早すぎる。
何もせずに終わった感じが(汗)。

2月はどうにかします。

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2009年12月22日

支援の意味を見つめなおすエイズ学会3日目とか。

今年もがっつり長文、エイズ学会報告の最終パートです。

ちなみに会場の外観はこんな感じでした。

名古屋国際会議場.jpg


最終日のスタートは、昨年は一部に強烈なインパクトを残し荒れた空気で終わった一般演題、ソーシャルワーク。
手帳の取得に関する演題が2つありましたが、そのうちひとつは高知大学病院で、昨年の地方医療のシンポジウムで資金の潤沢さをアピールしていた病院だったので興味深く見ていました。
高知大の発表は調査期間が2008年4月から2009年5月。昨年秋の治療の手引きの改訂で投薬の目安とするCD4の値が200から350になったので、手帳取得のタイミングの考え方が変わった中での対応についてもう少し突っ込んでいても良かったかも、と思いました。
去年の改訂のときに、例えば今330くらいで安定している人とかは悩むだろうな、と思いましたが、多分実際にはそんなに急には心構えができていなくて、結局すぐ投薬はしたがらないだろう、と想像していたのですが、今回出てきた数字でもおそらくはそうした層は投薬に踏み切っていないんじゃないかな、という気がしましたし、患者本人も服薬を望んでいないのではないかとも想像しました。
僕の知る範囲でも、330くらいで服薬無しで安定してしまっている人は服薬したがらない人もいます。ガイドラインの改訂とはいっても患者側の治療の選択を強制することはできないので、逆にそこに患者の意思が働いているなら良いと思います。
あと、医療費の問題があるので、「2級がとれるまで取得を待ちたがる陽性者」の存在の有無に踏み込んでも良かった気がしますが、さすがに病院としての調査では難しいかもしれませんね。

土曜日なので普段サラリーマンをしているスタッフも朝から参加しやすいからか、ここから陽性者支援系の一般演題が立て続けに出てきます。まずは陽性者支援1。
ここでは琉球大学病院の照屋先生の質問が秀逸でした。「会場に来ているゲイの人に、ゲイの方ですかと話しかけていいものか」という疑問を投げかけられたのです。
陽性者が学会に参加するためのスカラシップがあるおかげで、一般参加するゲイの陽性者がたくさんいるというのがエイズ学会の最大の特徴です。そういう人と交流をはかる場として機能したほうがいいのではないか、というのが真意のご質問だったのですが、緊張されていたのか実は質問を投げかけたときはその意図が伝わらなかったのです。
でもこの方、実はこの会場にいること自体がすごいのです。本当は臨床医の人こそ陽性者支援の演題に来るべきなんじゃないかなぁ、というのはずっと思っていたのですが、今回の学会は裏番組が「副作用」「臨床検査」「悪性腫瘍」というまさに臨床ゴールデンタイム。まさか臨床医がここに来るとは思っていなかったので、これはすごい人かも、と思ったわけです。
もちろん特攻して質問の真意を聞いて、お互いに考えていることを述べる時間を作りました。
良く考えたら、琉球大学病院の先生がゲイとのコミュニケーションができていないとは思えないので、その点からも質問の真意が聞けてよかったです。

演題は陽性者支援2に進みます。
6つのうち5つは電話相談で、ぷれいす東京(×3)、りょうちゃんず、POSP(陽性者サポートプロジェクト関西)の発表でした。
最初ちょっと思っていたのは、ぷれいす東京の「感染不安の電話相談」は何故この枠に入っているのかと言う疑問でした。感染不安なのですから、クライアントは陽性者ではないので、陽性者支援の枠に入れるのはどうだろうと。
でもあとからあるキーワードが出てきて、その疑問は解消しました。
そのキーワードは、「支援の連続性」です。何人かお話した方もこのキーワードにひっかかっていたように感じました。
感染の不安を持っている人の中にはある程度実際に感染している人がいることと、「怖くて検査にいけない」という人がいること、この2つを重ね合わせると、実は感染不安の電話相談は同時に「陽性の人が自分が陽性だと気づくための支援」になっていることもあるのではないかと思ったのです。また、感染不安の電話相談の中で陽性だった場合どうなるのかを聞く方もいるわけで、それは告知直後の行動を左右するものになるかもしれません。
支援と言う言葉の深さを感じる演題でした。

そして最後に就労支援。
昨年から登場した一般演題ですが、不況下での調査だけに調査結果とHIVを単純に結び付けていいのかはまだ手探りな感じがします。
あとこれは年齢分布上仕方が無い部分はあるのですが、新卒の就労の話がなかなかスポットが当たらないですね。
どちらかというと陽性告知後の離転職にどうしてもクローズアップしてしまう傾向があると思います。
ただ、新卒の就労に関する調査って本当は今から調査しないと年次の傾向を見ようにもデータが出ないことがあるので、そのあたりどこかフォローしているといいなと思うのですが・・・・。

全体の最後に参加したのが「HIV感染対策におけるパートナーシップ」のシンポジウム。aktaの運営をしているRainbowRingの代表でもある佐藤先生が座長でした。
今年はMSM向けの予防啓発に絞った形で、Love Act Fukuokaにも関わっておられる九州医療センターの山本先生が登場。お話がわかりやすくてよかったです。
でも聞いていて段々、これって別にMSM分野だけじゃないよね、って気持ちにだんだんなってきました。
どこかで業務にとても役立ちそうなセミナーが開催されていても、勤務時間扱いでは絶対いけなくて、有給休暇で行けといわれてしまいう、ということが公的機関の職員の方だとよくあります。専門的であったり特定のコミュニティに特化したNGOと「協働」が成立すると、その機会が生まれるという点は素晴らしいのですが、こんどは協働した部署で留まってしまうことが多くて、あとから別の部署での研修内容を知って「そんな研修やってるなら声かけてよ〜」って話になったりする、なんてことも耳にします。まさに縦割りってこういうことを言うんだね、って感じです。
既に様々な福祉の現場で「専門的な支援ができる団体が連携する」ことの重要性はさんざん指摘されているのですから、NGOとの協働がきっかけになって、自治体内でも横の連携を働かせた具体的なアクションに結びつくといいなぁと思いました。


というわけで充実した学会でした。
そして来年は東京開催。なんと、会場は高輪のプリンスホテル!
そんなところでゲイイベントが!(何度も重ねて申し上げている通り、日本エイズ学会はゲイイベントではありません)
来年は11月最後の水・木・金の3日間です。
頑張って有給とりたいと思います。
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2009年12月21日

世界と日本の差を考えるエイズ学会2日目とか。

2日目の報告です。

今回の会場にはNGOのブースがたくさん出展されていて、僕が関わる団体も並んでブースを出していました。

NGOブース.jpg

そんな展示ホールの片隅にも実は講演のためのスペースが用意されていていました。ビッグサイトの展示会なんかでも見かけるレイアウトです。
2日目はまずその会場でのラウンジセッション、「オーストラリアのHIV陽性者の調査から導き出されること」から聴くことにしました。
オーストラリアでは定期的に陽性者向けの調査が行われており、しかも研究者と陽性者の立ち位置がとても近いので、政策提言などにも有効なデータが得やすい環境にあるとのこと。これはとてもうらやましい話です。
支援団体に属しているということは自然と研究者の方との距離感はかなり近くなります。コメンテーターの放送大学・井上先生も指摘していたように、調査結果が政策に反映されるという流れが日本ではまだ希薄で、それどころか学会に行ったり刊行物を読んだりしないと調査対象に調査結果がフィードバックされないことさえあります。このブログなんかも、調査結果をふまえつつこんなことやってます、みたいなことを個人的といいつつ書いたりしていますが、オーストラリアのように政策に反映されるという形で調査結果を実感できるなら調査そのものへの参加意欲も変わってくるはずですし、研究者のモチベーションも上がってよいこと尽くめだと思いました。
調査の環境がそのレベルになるには日本はあとどのくらいかかるのか、と考えてしまいます。

シンクタンク的な役割を担うにはどうしたらいいのか、という課題を引きずって、会場に居残る形で次のセッションに。「エイズ予防財団はどう変わるのか」がテーマです。
前のセッションの流れをもろに受けて、おそらくシンクタンクにならなければならないエイズ予防財団のセッションですね。
法改正の結果、公益財団法人を目指すことになったエイズ予防財団ですが、別にこの団体、予防だけやっているわけではありません。ボランティアの研修やったり、いろいろな各地での啓発活動を後援していたり、地方での陽性者向けの相談事業の助成をしていたりします。
でも、見えにくい団体なんですよね。しかも財団専従の理事は全く矢面に立つ気が無く、苛立ちを感じながら見ていました。
むしろこのセッションは出席者がまさに業界著名人の皆様で、薬害発覚当時から第一線で活躍されていた臨床医の先生、様々なエイズ関連研究の主任研究員の方、関連NGOの代表やスタッフなどが集まり満席になる盛況ぶりで、財団関係者にプレッシャーをかける会になっていた気がします(まあそれでいいんだと思います)。
ちなみに陽性者のスタッフをそろそろ入れたいという意向があるようです。といっても、諸外国から見れば、まだいなかったのか、と言われてしまうのでしょうが・・・・。

そんな重い気分を振り払って、アルトマーク賞講演に。
アルトマーク賞はHIV関連研究と学会の発展に貢献した方に送られる賞で賞の名前はスポンサーになっている医薬データベースの会社名からとっています。
今回は日頃お世話になっているぷれいす東京の池上代表が受賞されたので、多数の関係者から記念講演に行くようすすめられたのですが、講演内容はハワイでのHIV対策がアメリカ全体で優秀なモデルケースとして評価されるまでの歴史的な内容と、そこから見える啓発活動に必要なものというお話で、とても興味深い内容でした。
多様性の受容とかコミュニティとの協働、予防とケアの連携とか、今日本での様々な活動で必要性を叫ばれている事柄がすでにハワイでは十年以上前から組みあがっていたのだなぁと。
朝のオーストラリアのセッションもそうでしたが、海外事例で学んだことをどう日本の環境に取り入れるか、は難しいけれど国内の活動がステップアップするために必要なことかなと思いました。

続いては挑戦的なタイトルのシンポジウム「HIVは本当に慢性になったのか?」へ。こちらも盛況でした。
僕は睡眠障害(睡眠時無呼吸低呼吸症)を持っていて、慢性疾患と言う言葉にあまり安堵感を感じないのですが、慢性疾患と言う言葉は医学的な見解に加えて、そもそも死のイメージに囚われてしまいがちな当事者に向けて意図的に発信された言葉であることが述べられました。つまり「わざわざ慢性疾患と言う表現を使う必要がある病気」なわけです。
睡眠障害の場合、死のイメージはないわけではありませんがむしろ日々の生活の質が低下することが大きいです。そこに慢性疾患という言葉を与えられても安堵にはならず、治療が終わらない病気と言うイメージを強調された感じがするんですよね。
この言葉一つとっても受け止め方が変わるので、医療の現場での「言語表現」の難しさを感じたことがまずひとつ。
それから、地域の陽性者団体であるLIFE東海の認知が広がるのはいいことだな、という思いがありました。エイズ学会が日本各地を渡り歩き、大都市以外での開催も視野に入れているのは学会開催をきっかけに地域での啓発が広がるという意味合いもあるからだそうです。そういう意味でも地域の当事者がプログラムで登壇することに重要な意味があると思いますし、今後東北、北陸、四国、沖縄などでも開催されるといいなぁと感じました。
あと、偏見や社会生活と言う点では、HIVはとても間違った認識をされている疾患なので、何ゆえそんな間違いが起きているのかの研究が必要なのかもしれないとちょっと感じました。HIV陽性者の受け入れを拒否する施設の話は、僕もこれまでにもいろいろな場所で聞いたのですが、昔聞いた話ですごい断り方がありました。
「必要な設備がありません」
何が必要なのかいってみろって感じですが(おそらくその場でも絶対そのように反論されているであろうと思います)、このあまりの下手な言い訳は偏見と言うより知識不足だなって気がするんですよね。
そんな中ではばたき福祉事業団の太平さんから出た「自らもハンディキャップを持ちつつも、温かい社会福祉の担い手になる意識」という点には仕事柄エンパワメントされた気がしました。

次は毎年欠かさず出席している、薬害の一般演題です。毎年参加者が減っている気がしてちょっと残念に思うところがあります。
発表の中で「自分の病状を認識していない当事者」についての調査があったのはとても面白く感じました。最新のCD4の値や自分の血友病の状態をアンケート調査したときに「わからない」と答える層に注目して、それらの質問に「わからない」と答えてしまう人の健康管理への意識などを分析する調査だったのですが、やはり健康維持のための行動などの点で意識の低さがしっかり数字に出ていました。
薬害と言う背景があるので、医療への信頼度とか薬への信頼度も性感染の当事者とは比べ物にならないくらい信用していない人もいます。でも僕が知る限りとても円滑に医療者とコミュニケーションしている人もいて、疾患の受けとめって本当に大事だなと毎回思います。無理に受け止めようとするのもまたいかがなものかと思いますが。
薬害と血友病はとても奥が深いしHIVとは切り離せないトピックなので、HIVに関連する活動をしている人にはもっと来て欲しい演題ですね。

続いてMSMの一般演題。こちらは盛況でした。そんなことだからゲイイベントとか言われるんですよ(言っているのは僕です)。
冒頭の名古屋医療センターの予防活動に関する陽性者調査は、演題の内容をチェックしていたときから興味を持っていました。思いっきり質問したりしましたが、菊池先生の回答も素晴らしく、この枠が終わったあとでも少しお話させていただけて良かったです。
HIVの予防の活動でいろいろなメッセージが発信されますが、はっきり言ってHIVに関する情報を一番求めているのは陽性者と感染不安の人(当然中には陽性者に変わる人がいる)なので、絶対予防のメッセージもそこへ届くんです。だからこそ配慮が欲しいということでもあり、また情報の伝達具合を見るためにも重要だと思っています。
この手の調査を手法を確立して各地でできるといいなぁと思います。
あと、この演題の他の発表では、「調査用語の難しさ」という点を考えさせられました。
これまでのエイズ学会は、臨床系は言葉が難しいから社会系に、という人が多かったのですが、今回の学会は社会系の演題発表で統計用語や調査用語が頻繁に使われていて、社会系でも言葉の壁にぶつかる人が多いのではないかと言う危惧を感じました。
「学会参加者のための学会用語の基礎知識」とかが必要かも・・・・という想いがありますが、その余力があるのはどこなのかというと思いつかず、僕のように一応団体などに所属しているものの特に学会に関して何かアクションしているわけではない人間がやるべきことかもしれません。

2日目の最後は今回唯一出席したサテライトシンポジウムである「HIV診療支援ネットワーク(A-net)の将来像」。
HIV感染症というのは本格的な研究がはじまってまだ20年くらいの、歴史の浅い感染症ですので、基礎研究や臨床研究は日進月歩。あっという間に知識が古くなっていきます。
臨床の現場の質を全国的に高めるために最新の情報を共有するのが診療支援ネットワークです。これが立ち上がって10年経過し、その見直しなどについてのシンポジウムがこの時間帯に組まれました。
とはいえ、実は臨床上の情報は症例検討、つまりある患者さんのデータによってもたらされることが多くあります。ここでネット環境と言うことを加味すると、当然患者のプライバシーと言う重要な問題が浮上してくるわけです。
このシンポジウムでは釧路労災病院の宮城島先生が地方医療の立場からコメントされていて興味深かったのですが、もっともっと医療格差の是正に突っ込んだ話ができても良かったかもしれません。どんな昨日が会ったらいいかと言う話に時間を使いすぎた印象がありました。


2日目は終了後、地元の知り合いと手羽先を食べにいったりしました。知り合いといってもこの日僕が出れなかったあるセッションで発表者になっていたのですが。
3日間ヘビーな学会の中で貴重な楽しい時間をすごすことができました。
ちなみにこの人から借りたのが、12/1の記事の画像につかったものであります。
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2009年12月20日

朝からフルスロットルなエイズ学会1日目とか。

大幅に遅くなりましたが、毎年の慣例を守りまして日本エイズ学会の報告をアップしていきたいと思います。
日付は繰り上げています。

電光掲示板.jpg

今年の会場は名古屋国際会議場。
参加者からは「無駄に広くて移動が大変」という悩みが聞かれるほどの会場でした。血友病の方とかは本気で大変そうでした。

さて初日の朝は、日本のMSM(Men who have sex with men)関連の研究の第一人者、市川先生が学会長だけあって、MSMの一般演題がいきなり組まれました。

その冒頭から日本人男性の中でのMSM人口を推定する調査がついに全国規模に。今回の調査結果での推測は成人男性の2%がMSMとのことで、ただし別の研究で実際にはもう少し高い可能性もありそうで、このあたりは調査方法を無作為抽出するのかなどの問題がありますね(国によっては徴兵のときの調査などもあるようです)。
各国でいろいろな方法で調査したときのデータが紹介されましたがやはりばらつきが目立つ結果に。
ちなみに一番高い数字を示していた国はオランダでしたが、これは性的な指向をどのくらい研究者にオープンにできるかというあたりの差かなと思います。
あと、「REACH Online 2008」をはじめ、リスキーなセックスをしてしまうに至る背景の研究が並んでいてなかなか面白かったです。旅先でリスキーなセックスをする人が、旅行先の地域にはあまりかかわらず、3割くらいの比率で出てくることなどが示されました。

続く一般演題は今回初登場の演題、コミュニティ。
東京以外にも仙台や横浜、福岡のゲイコミュニティでの予防啓発活動や調査結果の発表がありました。
コミュニティでの活動でよく話題にのぼるのは、ある程度年齢の高い層になかなか予防啓発のメッセージが届かない、という話です(若年層は若年層で大変なのですが)。
で、この「ある程度年齢の高い」というのを、僕らはおおむね50才あたりで区切っていたのですが、福岡だけがちょっと状況が違っていて、ほかの地域での活動に比べて、啓発効果が出ている層が若い方にずれている印象があって興味深かったです。
また、コミュニティの枠ではゲイ向けだけではなく、セックスワーカーについての発表もありました。
実は学会前日に上智大学で開催されたブラジルのHIV予防活動の講演会(学会では28日に開催)でセックスワーカーのコミュニティの話も聞いていたので、日本でセックスワーカーがコミュニティという形になっていないことの弊害などを再確認できました。

ここまできてお昼に。学会のランチタイムと言えば恒例のランチョンセミナーです。僕がチョイスしたセミナーは「HIV治療の新展開」。
日本で一番患者の多いエイズ拠点病院のボス、国立国際医療センターの岡先生の発表でした。
さあここから抗HIV薬についてマニアックな解説ですよ(爆)。
薬の組み合わせとして今は「キードラッグ」と「バックボーンドラッグ」という考え方があり、組み合わせて飲みます。なので複数の薬剤を混ぜて使うから「カクテル療法」なんて言うわけですね。
これまでは薬の効き方の仕組みによってキードラッグかバックボーンドラッグに振り分けられていたのですが、この学会でも非常に多く取り上げられた新薬であるラルテグラビル(商品名はアイセントレス)は、現在はキードラッグとして使われているものの、実はバックボーンにもなりうるのではないかという見解が示されたのです。
これが可能になると、薬の組み合わせのパターンも非常に広がります。広がるということは最初の投薬の選択肢が増えるだけでなく、副作用や耐性などで使える薬が減っても、まだ使える組み合わせが残りやすくもなるわけです。
ただ、アイセントレス自体は薬剤耐性ができやすいとの話もありました。
ともかくもアイセントレスに関しては今後もさまざまな治験や研究が行われていくことになるのではないかと感じています。

そんな話を聞いた後、さらに一般演題の抗HIV療法へ。
ダルナビル(商品名はプリジスタ)やエトラビリン(商品名はインテレンス)についての発表もあったのですが、まあ全体を通してラルテグラビル特集、という感じでした。
ほとんどの研究でウイルス抑制効果が高いことが示されていました。検出限界値以下まで下がるのにかかる時間が短いということですね。その一方で、CD4の上昇スピードはそこまで速くなく、横ばいの状態が続く方もいる模様。
飲む側からすれば、実はこういう情報を得ているかどうかが大きいのかな、と思います。なかなかCD4上がらないな、と不安に思いながら飲み続けるよりも、とにかく素早くウイルスを減らして安定させる薬なんだ、と思って飲み続けるほうが楽だと思うんですよね。どんな病気でも治療を続けるために最も重要なのはモチベーションだと思うのです。
ただし、まだアイセントレスそのものの副作用などについては、より多くの症例での検討が必要なようですから、本当のアイセントレスの評価は来年の学会で、ということかもしれません。
ちなみにこの演題では、仕事上の都合やむを得ず東海地方のゲイネタに異様に詳しくなってしまったことで昨年も取り上げた、山田赤十字病院の坂部先生が登場。昨年に引き続き素晴らしい発表で、抗HIV療法の一般演題で会場を笑いで包むという離れ業を見事に演じ、著名な諸先生方から絶賛されていました(注:本人は笑いをとるつもりはたぶんないです)。

なぜかこの日は気分的に臨床系に突っ込んでいきたい衝動にかられ、さらに一般演題の肝炎2・STI・STDに。
たださすがにこれは難しかったです。
大阪府立公衆衛生研究所の川畑先生がB型肝炎ウイルス(HBV)の遺伝子型の発表をされていて、大阪のMSMの間で日本では極めて稀なタイプGのHBVが見つかっていることなどを発表されていたのですが、僕自身が肝炎についてはまだ勉強不足なので、肝炎に関する臨床トークはさすがについていけませんでした。
梅毒やアメーバ赤痢は思ったよりいけたのですが・・・・こういう自分の知識の偏りに気がつくのもまた学会での重要な気づきではありますね。
梅毒は東京医科大の症例検討からでしたが、フロアからの質問でパートナーとのピンポン感染の話が振られ、それに対して山元先生が「といってもセックスの相手が不特定な例が多いんで・・・・」と非常にいいにくそうにしていたのが大変印象的でした(笑)。あと、終始楽しそうでご本人も「梅毒研究大好き」と公言している、しらかば診療所の井戸田先生も印象深かったですね。

この日の最後は、前の記事でも触れたシンポジウム「MSM社会とのインターフェイス」。臨床系研究と社会系研究のコラボレーションを掲げたシンポジウムです。
裏番組が強敵揃いで参加者は少なめでしたが、MSM向けの予防に関わるNGO関係者が多く見られました。本当は、コラボシンポジウムという特性上、裏番組に「治療の手引き」なんかぶつけちゃいけないんじゃないかと思われるのですが。
でも内容はなかなか。話題の方向が「臨床とMSM向けの予防施策の協働」という方向に行ったので、自分に非常に合った内容になりました。
特に、前のSTDの演題でも登壇された川畑先生が、このシンポジウムではMASH大阪や戦略研究との連携について、データ重視のHBVとはまったく違う表情で語られていたのが印象的でした。この人は現場の人だな、という感じで、コミュニティと接してみて初めて見えることを語られていました。
でもそれは裏返すと、コミュニティが見えにくい地方などでは接する機会がまず生まれにくいということでもあると思います。なんとなくHIVの臨床医の先生はそれなりにMSMフレンドリーなんじゃないかと思いがちだけれど、フレンドリー以前にMSMという言葉さえ知らない人もいて、医師の数や設備だけではない「格差」を生んでいる気がします。
同時に、実はコミュニティの側にも、臨床の現場とつながるだけの準備が求められるのではないかとも、コミュニティベースで活動している身には強く感じられました。去年の地方医療のシンポジウムで愛媛大の高田先生が「MSMの人たちから学ぶことが多い」とおっしゃっていたことを思い出しました。


こんな感じで一日目はMSMに始まってMSMに終わるということになりました。
以下3日間の学会報告にお付き合いください。
posted by sakura at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ボランティア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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