2011年12月30日

学会を通してこれからのMSM向け対策を展望してみるとか。

学会の振り返りをもうひとつ。
この記事のキーワードは「ポスト戦略研究」にします。

僕もボランティアとして少しお手伝いしていたので、「エイズ予防のための戦略研究」(以下「戦略」とします)が3月で終わって、その発表が山のように学会で繰り広げられたのは感慨深いものがありました。
同時に「ちょっとこれ多くない?」という気も多少ありましたが(苦笑)。
2日目に2時間半という超長いシンポジウムがあり、一般演題でも1時間10分の「MSM-2」は全部戦略関連、ほかにも一般演題の口演が2本にポスターが2本とまあ膨大な発表がありました。

戦略はそれだけ大掛かりなプロジェクトで、首都圏では保健師研修、関西ではクリニックでのSTDも含めた1000円検査など、MSM(男性とセックスする男性を指す言葉)向けの活動だけでなく検査施設向けのことをやったり、webサイト「HIV」マップを作ったり、さまざまな冊子などの資材を作ってきました。
http://www.hiv-map.net/
そして、戦略研究の拠点となるのが東京は新宿二丁目にあるakta、大阪は堂山にあるdistaというコミュニティーセンターでした。
こうした拠点を持って、ゲイの人が多く集まる地域で予防啓発を実施する、ということへの効果が認められて、エイズ予防財団を通して各地のコミュニティーセンターが今年度から事業化されたことが、戦略の大きな成果であったといえると思います。

事業化されたのは、以下の6つのセンターです。
ZEL(仙台/運営はやろっこ)
akta(東京/運営はakta、旧称RainbowRing)
rise(名古屋/運営はANGEL LIFE NAGOYA)
dista(大阪/運営はMASH大阪)
haco(福岡/運営はLove Act Fukuoka)
mabui(那覇/運営はnankr)

さてこう書くと、多少コミュニティーセンターのことをご存知の方は、「あれ、横浜のSHIPは?」となると思います。
かながわレインボーセンターSHIPというのが横浜にあります。
http://www.ship.y-cru.com/
実はSHIP、そもそも資金の流れがまったく違うんです。これは神奈川県の「かながわボランタリー基金21」から資金が出ていて、エイズ予防のための戦略研究での事業化の枠の中に入っていないんですね。
なのでSHIPにはこの事業化に伴う後ろ盾はありません。

さらに地方に目を向けます。
国策である以上(エイズ予防財団は厚生労働省の直下)、もうちょっと地域的な公平性をはかろうとするなら、北海道と北陸と中四国にもセンターがあるべきです。
政令指定都市で言えば札幌、新潟、広島とありますしね。
しかしながら、今度は運営できる団体が必要です。それもこの事業はMSMを対象にした団体が必要です。
たとえば札幌にはWAVEさっぽろがありますが、バーのママさんたちによるグループなので、バーをやめてセンター事業を、というのは難しそうに思います。レッドリボンさっぽろはMSMオンリーではない、といった具合です。
北陸は・・・・今のところ僕が把握している団体はないです。
中四国はもともと薬害の方たちによる団体であったりょうちゃんずが広島にありますが、MSM向けのグループとなると瀬戸内海の反対側、松山にあるHaaTえひめがエリア内最大手ということになってしまいます。中四国っていうくくりも中国と四国に分けるべきという意見もあるかもしれません。
願望だけで言うなら、松山くらいの規模(人口50万で地域の中心地になっている都市)のところにはコミュニティーセンターあってもいいよね、くらいの気持ちなのですが、あとは予算の問題です。
ちなみにHaaTえひめはおそらく日本でも一、二を争う先駆的な予防啓発団体なので、お金さえあればあの人たちはすぐにでもやると思います(苦笑)。

コミュニティーセンター事業だけみても、大事なのはむしろこれからで、それこそ事業仕分けでなくならないように頑張っていかないといけないということが如実にわかるのですが、戦略全体を考えても、さまざまなイベントや冊子製作の費用は「調査研究費」としてお金が出ていたので、それがなくなり、事業として運営していかなければならない中、どんなふうにMSM向けの予防啓発活動を維持していくのか、ということが最大の課題であります。

で、また個人的な意見になってしまうんですけど、学会でよく医者が「20代の患者一人にかかる『公費』が生涯で1億円」とか抜かすわけですよ(今回も3回くらい聞いた)。その発言を聞くたびに、予防啓発って「その活動で何人の感染が防げたか」が算出できないので困るんですが、それでもX億の予算があればX人以上の感染予防ができるんじゃないかなぁとか思ってしまうのですよね(もちろん予算が少なくすむのにこしたことはありません)。

そういうわけで、戦略研究が終わって、予防啓発は試行錯誤や調査の時代から、費用対効果が評価される時代になったと言えそうです。調査は「この手法は効果がないことがわかりました」でも意味があるけれど、事業はそれでは意味がないのです。
戦略研究は東京ではエイズ発症でわかる人が減って早期発見率が上がりました。しかし大阪では逆の結果が出ました。これを分析評価して、さらにこれからの事業も同様に分析して、評価を受けながら進んでいくことになります。

そうそう、最後にもうひとつ。戦略のシンポジウムは二時間半の長丁場でしたが、学会でも他にないくらい、長い拍手をいただきました。関係者の人はけっこうその長さにぐっときていました。
僕もそうです。シンポジウムにいらっしゃった皆様ありがとうございました。
posted by sakura at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ボランティア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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