2010年12月07日

頑張って難しい話も聞いてみたエイズ学会レポート基礎研究編とか。

エイズ学会から世界エイズデーとその後の週末も過ぎて、ようやく少し落ち着きました。
これまでの年に比べても、今年はいろいろな活動もあってバタバタしていた感じがします。

さてこのブログでは恒例なのですが、日本エイズ学会のレポートを何回かにわけて書いていきます。
去年までは日ごとにレポートしていたのですが、今年は形式を変えようと思います。
というのも、今回のテーマは「垣根を超えよう」。エイズ学会は基礎研究、臨床、社会の3つの分野からなっているのですがその垣根を超えることに今回は主眼が置かれました。
そこで、元来社会分野の関係者である僕が見た、基礎研究と臨床に関する話題について、そしてもちろん社会分野の話題について、それぞれジャンルごとに書いていこうと思います。

というわけで最初は基礎研究。
一番縁遠い部分をレポートします!


今回の学会の会場は、高輪プリンスホテルと隣接するさくらタワー。
11月末ということで紅葉が残り、どちらの建物も風情のあるたたずまいでした。

さくらタワーエントランス.jpg

日本庭園から高輪プリンス.jpg


さてエイズ学会での基礎研究の発表と言うのは概ね理解しがたく、「なんでこの分野の研究者はヒゲが多いんですかね」とかそんなことばかり気にしていたりするわけですが(また基礎研究者には伸ばし放題なヒゲが多いの・・・・)、今回はプレナリーセッションのおかげで普段は全く関わらない基礎研究の一端に触れる機会を得ることができました。
プレナリーセッションというのは、各分野から代表者が出て、他の分野の人も含めた全ての関係者に、これは伝えたい、ということを伝えるという、全員参加型の大規模セッションです。

初日のプレナリーは国立感染症研究所の武部先生が登場し、まず「分子疫学」からスタート。
分子疫学からみた感染動向の話でした。

HIVに1型と2型(日本では極めて稀)があるのですが、1型の中にさらにいろいろな種類があるんですね。これを「サブタイプ」といいます。

薬害被害者や男性同性間の感染で広がっているのはサブタイプB。
これは欧米型と言われているもので、日本ではほとんどがこれです。

ところが、一部の地域ではサブタイプCRF01_AEが流行している地域があります。
こちらはタイに起源をもち、実際の感染動向と照らし合わせると、比較的異性間の感染が多い地域、例えば長野や茨城などに見られるという特徴があるそうです。

このサブタイプをとらえることで、実際にどのような経路で感染が拡大していると考えられるのかを推測することができます。つまり外国人のセックスワーカーによる感染が一定数いると考えられる、などです。
もちろんこの感染経路は必ずこのサブタイプ、ということはないので、サブタイプを特定されてゲイバレなんてことは無いわけですが、地域での予防の活動をしているグループや、どんな層への予防啓発に予算を多く配分するか悩んでいる自治体の人などには便利な情報が提供されるかもしれません。
逆に、異性愛の感染が目立つ地域では、男性同性間は後回し、みたいな雰囲気が生まれかねないのですが、CRF01_AE以外のサブタイプもいろいろでてきますしサブタイプBもあるわけです。サブタイプが多様であることは多様な感染ルートが存在するということでもあり、むしろ「バランスの良い多角的な予防啓発」が必要とされるということになるのです。

こんなふうに、分子疫学(基礎研究分野)と予防啓発(社会分野)がリンクすることが確認できるのがこのプレナリーセッションのよいところでした。実に刺激的なセッション。これが3日間ですので3回開催されたのです。

2日目は名古屋医療センターの杉浦先生から薬剤耐性ウイルスの動向についてでした。
こちらは薬剤耐性による治療の脱落率は1.5%という数字が出てきました。感染不安の方には「薬を忘れずに飲み続けられるか不安」→「治療が失敗するんじゃないか」→「結局自分は生きられない」みたいなものすごい負の連想をしてしまう人がいるのですが、何だかんだで皆薬は飲むのね、という印象。ただしこれは「病院に来なくなった」人は集計できないので、医療とのつながりが大事だということも再認識させられました。

そしてこの1.5%は先進国の中でも突出して優秀な数字らしいのですが、裏を返すと耐性ができてしまった人に次の一手をどうするか、という点については臨床経験の少ないドクターも多いということ。
また東海地域では感染発覚時から何らかの薬剤への耐性を持っているウイルスに感染している人の割合が他の地域に比べて高めなのではないかと言う調査報告もあり、必ずしも楽観はできないようです。

最終日は東大医科研の俣野先生からワクチンの話。
これは僕もわからなかった部分がそこそこあったのですが、ざっくり言えばHIVが体に侵入したときに感染を成立させないようその活動を阻害する物質、いわば疑似HIV抗体のようなものを体内で発生させるためのワクチンを開発しているという話でした。

印象としては1回打てば確実にというワクチンにはならなさそうだけれども、宗教的にコンドームを使えない地域などではひとつの光になりそうにも感じました。


こうしたプレナリーセッションは、話す側の技量もかなり問われます。まして基礎研究は専門用語がバンバンできてきて一般的な社会分野の人には理解のための足がかりすら見つからないことが多いのですが、今回はそれでも気づきや発見がありました。それは極力難しい用語を避けながらざっくり理解するにはどう考えたら良いかを踏まえて発表された先生のお力によるものかと思います。


こんな調子であと4回くらい続きます(社会分野はさらに細かくいろいろ書きます)。
長文が当面続きますがどうぞご容赦ください。
posted by sakura at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ボランティア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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