2009年12月22日

支援の意味を見つめなおすエイズ学会3日目とか。

今年もがっつり長文、エイズ学会報告の最終パートです。

ちなみに会場の外観はこんな感じでした。

名古屋国際会議場.jpg


最終日のスタートは、昨年は一部に強烈なインパクトを残し荒れた空気で終わった一般演題、ソーシャルワーク。
手帳の取得に関する演題が2つありましたが、そのうちひとつは高知大学病院で、昨年の地方医療のシンポジウムで資金の潤沢さをアピールしていた病院だったので興味深く見ていました。
高知大の発表は調査期間が2008年4月から2009年5月。昨年秋の治療の手引きの改訂で投薬の目安とするCD4の値が200から350になったので、手帳取得のタイミングの考え方が変わった中での対応についてもう少し突っ込んでいても良かったかも、と思いました。
去年の改訂のときに、例えば今330くらいで安定している人とかは悩むだろうな、と思いましたが、多分実際にはそんなに急には心構えができていなくて、結局すぐ投薬はしたがらないだろう、と想像していたのですが、今回出てきた数字でもおそらくはそうした層は投薬に踏み切っていないんじゃないかな、という気がしましたし、患者本人も服薬を望んでいないのではないかとも想像しました。
僕の知る範囲でも、330くらいで服薬無しで安定してしまっている人は服薬したがらない人もいます。ガイドラインの改訂とはいっても患者側の治療の選択を強制することはできないので、逆にそこに患者の意思が働いているなら良いと思います。
あと、医療費の問題があるので、「2級がとれるまで取得を待ちたがる陽性者」の存在の有無に踏み込んでも良かった気がしますが、さすがに病院としての調査では難しいかもしれませんね。

土曜日なので普段サラリーマンをしているスタッフも朝から参加しやすいからか、ここから陽性者支援系の一般演題が立て続けに出てきます。まずは陽性者支援1。
ここでは琉球大学病院の照屋先生の質問が秀逸でした。「会場に来ているゲイの人に、ゲイの方ですかと話しかけていいものか」という疑問を投げかけられたのです。
陽性者が学会に参加するためのスカラシップがあるおかげで、一般参加するゲイの陽性者がたくさんいるというのがエイズ学会の最大の特徴です。そういう人と交流をはかる場として機能したほうがいいのではないか、というのが真意のご質問だったのですが、緊張されていたのか実は質問を投げかけたときはその意図が伝わらなかったのです。
でもこの方、実はこの会場にいること自体がすごいのです。本当は臨床医の人こそ陽性者支援の演題に来るべきなんじゃないかなぁ、というのはずっと思っていたのですが、今回の学会は裏番組が「副作用」「臨床検査」「悪性腫瘍」というまさに臨床ゴールデンタイム。まさか臨床医がここに来るとは思っていなかったので、これはすごい人かも、と思ったわけです。
もちろん特攻して質問の真意を聞いて、お互いに考えていることを述べる時間を作りました。
良く考えたら、琉球大学病院の先生がゲイとのコミュニケーションができていないとは思えないので、その点からも質問の真意が聞けてよかったです。

演題は陽性者支援2に進みます。
6つのうち5つは電話相談で、ぷれいす東京(×3)、りょうちゃんず、POSP(陽性者サポートプロジェクト関西)の発表でした。
最初ちょっと思っていたのは、ぷれいす東京の「感染不安の電話相談」は何故この枠に入っているのかと言う疑問でした。感染不安なのですから、クライアントは陽性者ではないので、陽性者支援の枠に入れるのはどうだろうと。
でもあとからあるキーワードが出てきて、その疑問は解消しました。
そのキーワードは、「支援の連続性」です。何人かお話した方もこのキーワードにひっかかっていたように感じました。
感染の不安を持っている人の中にはある程度実際に感染している人がいることと、「怖くて検査にいけない」という人がいること、この2つを重ね合わせると、実は感染不安の電話相談は同時に「陽性の人が自分が陽性だと気づくための支援」になっていることもあるのではないかと思ったのです。また、感染不安の電話相談の中で陽性だった場合どうなるのかを聞く方もいるわけで、それは告知直後の行動を左右するものになるかもしれません。
支援と言う言葉の深さを感じる演題でした。

そして最後に就労支援。
昨年から登場した一般演題ですが、不況下での調査だけに調査結果とHIVを単純に結び付けていいのかはまだ手探りな感じがします。
あとこれは年齢分布上仕方が無い部分はあるのですが、新卒の就労の話がなかなかスポットが当たらないですね。
どちらかというと陽性告知後の離転職にどうしてもクローズアップしてしまう傾向があると思います。
ただ、新卒の就労に関する調査って本当は今から調査しないと年次の傾向を見ようにもデータが出ないことがあるので、そのあたりどこかフォローしているといいなと思うのですが・・・・。

全体の最後に参加したのが「HIV感染対策におけるパートナーシップ」のシンポジウム。aktaの運営をしているRainbowRingの代表でもある佐藤先生が座長でした。
今年はMSM向けの予防啓発に絞った形で、Love Act Fukuokaにも関わっておられる九州医療センターの山本先生が登場。お話がわかりやすくてよかったです。
でも聞いていて段々、これって別にMSM分野だけじゃないよね、って気持ちにだんだんなってきました。
どこかで業務にとても役立ちそうなセミナーが開催されていても、勤務時間扱いでは絶対いけなくて、有給休暇で行けといわれてしまいう、ということが公的機関の職員の方だとよくあります。専門的であったり特定のコミュニティに特化したNGOと「協働」が成立すると、その機会が生まれるという点は素晴らしいのですが、こんどは協働した部署で留まってしまうことが多くて、あとから別の部署での研修内容を知って「そんな研修やってるなら声かけてよ〜」って話になったりする、なんてことも耳にします。まさに縦割りってこういうことを言うんだね、って感じです。
既に様々な福祉の現場で「専門的な支援ができる団体が連携する」ことの重要性はさんざん指摘されているのですから、NGOとの協働がきっかけになって、自治体内でも横の連携を働かせた具体的なアクションに結びつくといいなぁと思いました。


というわけで充実した学会でした。
そして来年は東京開催。なんと、会場は高輪のプリンスホテル!
そんなところでゲイイベントが!(何度も重ねて申し上げている通り、日本エイズ学会はゲイイベントではありません)
来年は11月最後の水・木・金の3日間です。
頑張って有給とりたいと思います。
posted by sakura at 23:59| Comment(2) | TrackBack(0) | ボランティア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>>ここでは琉球大学病院の照屋先生の質問が秀逸でした。

その場には居合わせたのですが、そういう意図だったんですね。よくわかりました。
Posted by かわちゃん at 2009年12月27日 21:44
>かわちゃんさん

コメントありがとうございます。
僕もあの場で質問をすることがありますが、一昨年初めて質問した時は真意が伝わらず後味が悪かったことがありました。
3回目の本格的な参加になって、いろいろ考えながら話を聞くことができるようになった気がします。
Posted by sakura at 2009年12月31日 20:32
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