2009年12月21日

世界と日本の差を考えるエイズ学会2日目とか。

2日目の報告です。

今回の会場にはNGOのブースがたくさん出展されていて、僕が関わる団体も並んでブースを出していました。

NGOブース.jpg

そんな展示ホールの片隅にも実は講演のためのスペースが用意されていていました。ビッグサイトの展示会なんかでも見かけるレイアウトです。
2日目はまずその会場でのラウンジセッション、「オーストラリアのHIV陽性者の調査から導き出されること」から聴くことにしました。
オーストラリアでは定期的に陽性者向けの調査が行われており、しかも研究者と陽性者の立ち位置がとても近いので、政策提言などにも有効なデータが得やすい環境にあるとのこと。これはとてもうらやましい話です。
支援団体に属しているということは自然と研究者の方との距離感はかなり近くなります。コメンテーターの放送大学・井上先生も指摘していたように、調査結果が政策に反映されるという流れが日本ではまだ希薄で、それどころか学会に行ったり刊行物を読んだりしないと調査対象に調査結果がフィードバックされないことさえあります。このブログなんかも、調査結果をふまえつつこんなことやってます、みたいなことを個人的といいつつ書いたりしていますが、オーストラリアのように政策に反映されるという形で調査結果を実感できるなら調査そのものへの参加意欲も変わってくるはずですし、研究者のモチベーションも上がってよいこと尽くめだと思いました。
調査の環境がそのレベルになるには日本はあとどのくらいかかるのか、と考えてしまいます。

シンクタンク的な役割を担うにはどうしたらいいのか、という課題を引きずって、会場に居残る形で次のセッションに。「エイズ予防財団はどう変わるのか」がテーマです。
前のセッションの流れをもろに受けて、おそらくシンクタンクにならなければならないエイズ予防財団のセッションですね。
法改正の結果、公益財団法人を目指すことになったエイズ予防財団ですが、別にこの団体、予防だけやっているわけではありません。ボランティアの研修やったり、いろいろな各地での啓発活動を後援していたり、地方での陽性者向けの相談事業の助成をしていたりします。
でも、見えにくい団体なんですよね。しかも財団専従の理事は全く矢面に立つ気が無く、苛立ちを感じながら見ていました。
むしろこのセッションは出席者がまさに業界著名人の皆様で、薬害発覚当時から第一線で活躍されていた臨床医の先生、様々なエイズ関連研究の主任研究員の方、関連NGOの代表やスタッフなどが集まり満席になる盛況ぶりで、財団関係者にプレッシャーをかける会になっていた気がします(まあそれでいいんだと思います)。
ちなみに陽性者のスタッフをそろそろ入れたいという意向があるようです。といっても、諸外国から見れば、まだいなかったのか、と言われてしまうのでしょうが・・・・。

そんな重い気分を振り払って、アルトマーク賞講演に。
アルトマーク賞はHIV関連研究と学会の発展に貢献した方に送られる賞で賞の名前はスポンサーになっている医薬データベースの会社名からとっています。
今回は日頃お世話になっているぷれいす東京の池上代表が受賞されたので、多数の関係者から記念講演に行くようすすめられたのですが、講演内容はハワイでのHIV対策がアメリカ全体で優秀なモデルケースとして評価されるまでの歴史的な内容と、そこから見える啓発活動に必要なものというお話で、とても興味深い内容でした。
多様性の受容とかコミュニティとの協働、予防とケアの連携とか、今日本での様々な活動で必要性を叫ばれている事柄がすでにハワイでは十年以上前から組みあがっていたのだなぁと。
朝のオーストラリアのセッションもそうでしたが、海外事例で学んだことをどう日本の環境に取り入れるか、は難しいけれど国内の活動がステップアップするために必要なことかなと思いました。

続いては挑戦的なタイトルのシンポジウム「HIVは本当に慢性になったのか?」へ。こちらも盛況でした。
僕は睡眠障害(睡眠時無呼吸低呼吸症)を持っていて、慢性疾患と言う言葉にあまり安堵感を感じないのですが、慢性疾患と言う言葉は医学的な見解に加えて、そもそも死のイメージに囚われてしまいがちな当事者に向けて意図的に発信された言葉であることが述べられました。つまり「わざわざ慢性疾患と言う表現を使う必要がある病気」なわけです。
睡眠障害の場合、死のイメージはないわけではありませんがむしろ日々の生活の質が低下することが大きいです。そこに慢性疾患という言葉を与えられても安堵にはならず、治療が終わらない病気と言うイメージを強調された感じがするんですよね。
この言葉一つとっても受け止め方が変わるので、医療の現場での「言語表現」の難しさを感じたことがまずひとつ。
それから、地域の陽性者団体であるLIFE東海の認知が広がるのはいいことだな、という思いがありました。エイズ学会が日本各地を渡り歩き、大都市以外での開催も視野に入れているのは学会開催をきっかけに地域での啓発が広がるという意味合いもあるからだそうです。そういう意味でも地域の当事者がプログラムで登壇することに重要な意味があると思いますし、今後東北、北陸、四国、沖縄などでも開催されるといいなぁと感じました。
あと、偏見や社会生活と言う点では、HIVはとても間違った認識をされている疾患なので、何ゆえそんな間違いが起きているのかの研究が必要なのかもしれないとちょっと感じました。HIV陽性者の受け入れを拒否する施設の話は、僕もこれまでにもいろいろな場所で聞いたのですが、昔聞いた話ですごい断り方がありました。
「必要な設備がありません」
何が必要なのかいってみろって感じですが(おそらくその場でも絶対そのように反論されているであろうと思います)、このあまりの下手な言い訳は偏見と言うより知識不足だなって気がするんですよね。
そんな中ではばたき福祉事業団の太平さんから出た「自らもハンディキャップを持ちつつも、温かい社会福祉の担い手になる意識」という点には仕事柄エンパワメントされた気がしました。

次は毎年欠かさず出席している、薬害の一般演題です。毎年参加者が減っている気がしてちょっと残念に思うところがあります。
発表の中で「自分の病状を認識していない当事者」についての調査があったのはとても面白く感じました。最新のCD4の値や自分の血友病の状態をアンケート調査したときに「わからない」と答える層に注目して、それらの質問に「わからない」と答えてしまう人の健康管理への意識などを分析する調査だったのですが、やはり健康維持のための行動などの点で意識の低さがしっかり数字に出ていました。
薬害と言う背景があるので、医療への信頼度とか薬への信頼度も性感染の当事者とは比べ物にならないくらい信用していない人もいます。でも僕が知る限りとても円滑に医療者とコミュニケーションしている人もいて、疾患の受けとめって本当に大事だなと毎回思います。無理に受け止めようとするのもまたいかがなものかと思いますが。
薬害と血友病はとても奥が深いしHIVとは切り離せないトピックなので、HIVに関連する活動をしている人にはもっと来て欲しい演題ですね。

続いてMSMの一般演題。こちらは盛況でした。そんなことだからゲイイベントとか言われるんですよ(言っているのは僕です)。
冒頭の名古屋医療センターの予防活動に関する陽性者調査は、演題の内容をチェックしていたときから興味を持っていました。思いっきり質問したりしましたが、菊池先生の回答も素晴らしく、この枠が終わったあとでも少しお話させていただけて良かったです。
HIVの予防の活動でいろいろなメッセージが発信されますが、はっきり言ってHIVに関する情報を一番求めているのは陽性者と感染不安の人(当然中には陽性者に変わる人がいる)なので、絶対予防のメッセージもそこへ届くんです。だからこそ配慮が欲しいということでもあり、また情報の伝達具合を見るためにも重要だと思っています。
この手の調査を手法を確立して各地でできるといいなぁと思います。
あと、この演題の他の発表では、「調査用語の難しさ」という点を考えさせられました。
これまでのエイズ学会は、臨床系は言葉が難しいから社会系に、という人が多かったのですが、今回の学会は社会系の演題発表で統計用語や調査用語が頻繁に使われていて、社会系でも言葉の壁にぶつかる人が多いのではないかと言う危惧を感じました。
「学会参加者のための学会用語の基礎知識」とかが必要かも・・・・という想いがありますが、その余力があるのはどこなのかというと思いつかず、僕のように一応団体などに所属しているものの特に学会に関して何かアクションしているわけではない人間がやるべきことかもしれません。

2日目の最後は今回唯一出席したサテライトシンポジウムである「HIV診療支援ネットワーク(A-net)の将来像」。
HIV感染症というのは本格的な研究がはじまってまだ20年くらいの、歴史の浅い感染症ですので、基礎研究や臨床研究は日進月歩。あっという間に知識が古くなっていきます。
臨床の現場の質を全国的に高めるために最新の情報を共有するのが診療支援ネットワークです。これが立ち上がって10年経過し、その見直しなどについてのシンポジウムがこの時間帯に組まれました。
とはいえ、実は臨床上の情報は症例検討、つまりある患者さんのデータによってもたらされることが多くあります。ここでネット環境と言うことを加味すると、当然患者のプライバシーと言う重要な問題が浮上してくるわけです。
このシンポジウムでは釧路労災病院の宮城島先生が地方医療の立場からコメントされていて興味深かったのですが、もっともっと医療格差の是正に突っ込んだ話ができても良かったかもしれません。どんな昨日が会ったらいいかと言う話に時間を使いすぎた印象がありました。


2日目は終了後、地元の知り合いと手羽先を食べにいったりしました。知り合いといってもこの日僕が出れなかったあるセッションで発表者になっていたのですが。
3日間ヘビーな学会の中で貴重な楽しい時間をすごすことができました。
ちなみにこの人から借りたのが、12/1の記事の画像につかったものであります。
posted by sakura at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ボランティア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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