2012年12月30日

予防啓発と検査と支援の関係性が問われる日本エイズ学会報告郵送検査編とか。

年の瀬のご挨拶の前にもうひとつだけ学会報告を。
4本目のエイズ学会報告は臨床と社会をつなぐ【HIV検査の方向性】を取り上げていきたいと思います。いろいろ考えて今年はこれをラストにしようと思います。
検査の話ですが、治療の開始時期の話と絡んでいる問題でもあります。

アフリカで、陽性者と陰性者のカップルを対象に、陽性者を早期治療すると陰性者への感染率が低くなるという実験結果が出たという話、聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もう少し細かく説明すると、陽性者と陰性者のカップルを無作為に2グループにわけて、片方はCD4が一定以下になるまで投薬しない、片方はCD4を無視して治療を即開始するというグループに分けての研究で、全てのカップルにはセーファーセックスに関する知識や意識付けの教育を実施し(ここで差が出ると比較対象にならない)、それでもセーファーセックスがうまくいかずに感染してしまうケースがどのくらいあるのかを追跡するというものです。
で、2つのグループで感染が成立してしまう割合に変わりがなければ、治療開始時期が予防に影響を与えないっていう結果になったのですが、実際には早期に治療したほうが圧倒的に感染成立が少なかったため、陽性者を早々に投薬治療してウイルス量を下げておけば、セーファーセックスに失敗しても感染が起きにくいっていうことが証明されたという話です。

つまり、「感染拡大を防ぐ、予防のために治療しよう」ということです。
「予防のための治療」ということで、“Treat as Prevention”、略してTaPと呼ばれます(本当にHIV界隈は何でも略すのが好きですね)。
しかしながら予防のための治療のためには、当たり前ですが治療の対象を見つけなければなりません。
そのため、「バンバン検査してまだ見つかっていない陽性者をどんどん見つけよう!」的な考え方を持っている人たちを後押しする形になっているのです。

ただ、検査を推進する側の言い分はわかるものの、検査を受ける側、また実際に検査を担当する人の状況はどうなのでしょう。
かつて告知状況についての陽性者アンケート調査がありましたが、告知時の状況は必ずしもスムーズな受診につながるものとは限らず、告知担当者のスキルが非常に問われるものであると思います。

そんな中で、今回の学会は郵送検査に関する内容がとても多かったのが印象的でした。
中でも僕が個人的にもとても注目していた一般演題発表の一つが、MASH大阪の郵送検査(演題番号O23-107)。MSM向けに実施するということは陽性率がある程度高い可能性がある層を対象にしているわけでよりセンシティブです。
もちろん実施側もわかっているので、郵送検査キットをイベントで配布して、当日は検査会社の人をイベント会場のブースに呼び、電話相談や対面での告知が可能な状況を整備して、数ヶ月に及ぶフォロー期間を準備しての取り組みでした。
これ聞いていた方はわかると思うのですが、発表者は批判を覚悟で発表していたと思います。実際の検査利用者がフォロー体制にどのくらい乗ってくるのかわからないし、一人で自宅でネットで告知を受けることも可能なので、そこで陽性の告知を受けた場合のフォローはどこまでやっても結局は当人の行動にゆだねられるわけです。

ただ、この演題、前のレポートでも紹介したHaaTえひめの人がぼそっとこんなことを言っていたんですよね。
「地方で早期発見を目指すなら、郵送検査を選択肢の一つにしないと難しいんじゃないかな」
地方ではまだまだ平日の昼しか検査やっていないとかいうエリアもあり、町のクリニックは待合室に知り合いがたくさんいる(クリニックの選択肢が少ない)といった環境で「早期発見」を目指すには、どうしたらいいのかということですね。
早期発見という意味合いよりは、発症する前に感染に気がつくことができる環境を整える、という言い方がいいかもしれません。

ごく最近郵送検査が6万件を超えたというニュースがありましたが、企業サイドからフォローアップに関する話題も出ていました。
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/121225/ecb1212250951000-n1.htm
社名ではピンとこなくても「STD研究所」というサイトは知っているかも。そしてこの会社こそ、大阪の検査でイベント会場にブースを出した会社なのです。

アメリカのガイドラインはCD4の数値関係なく即投薬へと動いているという報告もありました。検査から治療までが短くなっていく中で、どんなフォローができるのか、そして早期発見の名の下にしていいこととしてはいけないことはどう線が引かれるのか、慎重に推移を見ていくことが大事だろうと思います。

最終日の公開講座の座長でもあった、産経新聞の宮田さんがまとまった記事を書かれました。
予防としての支援、という言葉、これから重要なキーワードになりそうです。
こちらもご参照ください。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/121212/bdy12121207400004-n1.htm
posted by sakura at 23:14| Comment(0) | TrackBack(0) | ボランティア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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