2011年12月31日

激動の年を経て新しい年へとか。

大震災のあった2011年が終わります。

震災を経て、ずっと考えていることは、生きることを考える、ということでした。
放射線の影響による病への忌避感はわかるのです。わかるのですが、病と生きることを否定することは行き過ぎているような気がします。
しかしそれを否定するメッセージをたくさん見てしまう一年でもありました。

来年もまた、病とともに生きることを考えながらの一年になるのだろうと思います。

皆様にとって2012年がすばらしい年でありますように。


2012年もよろしく.jpg
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2011年12月30日

学会を通してこれからのMSM向け対策を展望してみるとか。

学会の振り返りをもうひとつ。
この記事のキーワードは「ポスト戦略研究」にします。

僕もボランティアとして少しお手伝いしていたので、「エイズ予防のための戦略研究」(以下「戦略」とします)が3月で終わって、その発表が山のように学会で繰り広げられたのは感慨深いものがありました。
同時に「ちょっとこれ多くない?」という気も多少ありましたが(苦笑)。
2日目に2時間半という超長いシンポジウムがあり、一般演題でも1時間10分の「MSM-2」は全部戦略関連、ほかにも一般演題の口演が2本にポスターが2本とまあ膨大な発表がありました。

戦略はそれだけ大掛かりなプロジェクトで、首都圏では保健師研修、関西ではクリニックでのSTDも含めた1000円検査など、MSM(男性とセックスする男性を指す言葉)向けの活動だけでなく検査施設向けのことをやったり、webサイト「HIV」マップを作ったり、さまざまな冊子などの資材を作ってきました。
http://www.hiv-map.net/
そして、戦略研究の拠点となるのが東京は新宿二丁目にあるakta、大阪は堂山にあるdistaというコミュニティーセンターでした。
こうした拠点を持って、ゲイの人が多く集まる地域で予防啓発を実施する、ということへの効果が認められて、エイズ予防財団を通して各地のコミュニティーセンターが今年度から事業化されたことが、戦略の大きな成果であったといえると思います。

事業化されたのは、以下の6つのセンターです。
ZEL(仙台/運営はやろっこ)
akta(東京/運営はakta、旧称RainbowRing)
rise(名古屋/運営はANGEL LIFE NAGOYA)
dista(大阪/運営はMASH大阪)
haco(福岡/運営はLove Act Fukuoka)
mabui(那覇/運営はnankr)

さてこう書くと、多少コミュニティーセンターのことをご存知の方は、「あれ、横浜のSHIPは?」となると思います。
かながわレインボーセンターSHIPというのが横浜にあります。
http://www.ship.y-cru.com/
実はSHIP、そもそも資金の流れがまったく違うんです。これは神奈川県の「かながわボランタリー基金21」から資金が出ていて、エイズ予防のための戦略研究での事業化の枠の中に入っていないんですね。
なのでSHIPにはこの事業化に伴う後ろ盾はありません。

さらに地方に目を向けます。
国策である以上(エイズ予防財団は厚生労働省の直下)、もうちょっと地域的な公平性をはかろうとするなら、北海道と北陸と中四国にもセンターがあるべきです。
政令指定都市で言えば札幌、新潟、広島とありますしね。
しかしながら、今度は運営できる団体が必要です。それもこの事業はMSMを対象にした団体が必要です。
たとえば札幌にはWAVEさっぽろがありますが、バーのママさんたちによるグループなので、バーをやめてセンター事業を、というのは難しそうに思います。レッドリボンさっぽろはMSMオンリーではない、といった具合です。
北陸は・・・・今のところ僕が把握している団体はないです。
中四国はもともと薬害の方たちによる団体であったりょうちゃんずが広島にありますが、MSM向けのグループとなると瀬戸内海の反対側、松山にあるHaaTえひめがエリア内最大手ということになってしまいます。中四国っていうくくりも中国と四国に分けるべきという意見もあるかもしれません。
願望だけで言うなら、松山くらいの規模(人口50万で地域の中心地になっている都市)のところにはコミュニティーセンターあってもいいよね、くらいの気持ちなのですが、あとは予算の問題です。
ちなみにHaaTえひめはおそらく日本でも一、二を争う先駆的な予防啓発団体なので、お金さえあればあの人たちはすぐにでもやると思います(苦笑)。

コミュニティーセンター事業だけみても、大事なのはむしろこれからで、それこそ事業仕分けでなくならないように頑張っていかないといけないということが如実にわかるのですが、戦略全体を考えても、さまざまなイベントや冊子製作の費用は「調査研究費」としてお金が出ていたので、それがなくなり、事業として運営していかなければならない中、どんなふうにMSM向けの予防啓発活動を維持していくのか、ということが最大の課題であります。

で、また個人的な意見になってしまうんですけど、学会でよく医者が「20代の患者一人にかかる『公費』が生涯で1億円」とか抜かすわけですよ(今回も3回くらい聞いた)。その発言を聞くたびに、予防啓発って「その活動で何人の感染が防げたか」が算出できないので困るんですが、それでもX億の予算があればX人以上の感染予防ができるんじゃないかなぁとか思ってしまうのですよね(もちろん予算が少なくすむのにこしたことはありません)。

そういうわけで、戦略研究が終わって、予防啓発は試行錯誤や調査の時代から、費用対効果が評価される時代になったと言えそうです。調査は「この手法は効果がないことがわかりました」でも意味があるけれど、事業はそれでは意味がないのです。
戦略研究は東京ではエイズ発症でわかる人が減って早期発見率が上がりました。しかし大阪では逆の結果が出ました。これを分析評価して、さらにこれからの事業も同様に分析して、評価を受けながら進んでいくことになります。

そうそう、最後にもうひとつ。戦略のシンポジウムは二時間半の長丁場でしたが、学会でも他にないくらい、長い拍手をいただきました。関係者の人はけっこうその長さにぐっときていました。
僕もそうです。シンポジウムにいらっしゃった皆様ありがとうございました。
posted by sakura at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ボランティア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月25日

福祉とHIV/AIDSを考えるエイズ学会報告その1とか。

今年は学会以降毎週のようにイベントごとが続いたので、学会のまとめが遅くなってしまいました。
でも年越しは何とかさけて、きちんと今年のうちに振り返ろうと思います。

毎年エイズ学会の報告の形式は考えるところがあります。
日付別に書くと、基礎・臨床・社会の各分野の話が常に混ざることになるので、昨年はテーマごとに書いたのですが、横断的な話が扱いにくいということもありました。
そこで、今年はいっそのこと、僕がこれだと思ったシンポジウムや、演題発表についてダイレクトに書くことにしようと決めました。
とはいっても結局長文になってしまうのですが、よろしくお付き合いください。


まずは初日の夜の社会系のシンポジウムから。
ソーシャルワークのシンポジウム「HIV陽性者の包括的生活支援を目指して〜ソーシャルワーカーによるミクロ・メゾ・マクロ実践への挑戦」に行きました。
このシンポジウム、一番奥だしとても小ぢんまりとしていたけれど、内容的にはとても良かったです。陽性者向けのスカラシップの裏番組になってしまったのですが、当事者の人にもぜひ参加して欲しいシンポジウムでした。

まず良かったと感じた点は、本来は当たり前だろうという話になるべき部分ですが、HIVをめぐる諸問題がはじめて「地域福祉」の世界に降りてきた、という感じがあったこと。
調査研究レベルではなく、実践としての話です。

このシンポジウムは東京・八王子の社会福祉法人武蔵野会の山内さん、大阪・門真の地域生活支援センター「あん」の脊戸さんが地域福祉側のパネリストとして立ち、それに対して医療側も東京・駒込病院の関矢さん、大阪医療センターの岡本さんがパネリストとなり、概ね経験談ベースの話をしながら、和やかに困難さと今後に向けての提言をぶつけ合うという構成になっていました。聞いていないのでわからないのですが、多分スカラシップのシンポジウムより理解しやすかったと思います(憶測による風評の例)。

地域福祉とHIVは、最近は高齢陽性者の問題として語られることが多いのですが、それだけではなくて、例えば知的障害を持っているHIV陽性者、複合的な身体障害を持つ(場合によっては発症の後遺症であることも)HIV陽性者の問題も同様に存在するわけです。
メンタルヘルスに関連して精神障害や依存の部分はやや先行して語られていて、そのほかの福祉の分野はあまり触れられてこなかった部分だと考えます。

それらは細分化してしまうとまだまだレアなケースかもしれないのですが、「地域福祉」という大きな枠組みで捉えられて経験が共有されることは良いことだなぁと思うわけです。
そして、山内さんが「福祉施設が陽性者を自分たちのクライアントになりうる人々として受け止める」という、これも当然のことを「当たり前ですよね」で終わらずにきちんと分析されていたことが印象的でした。
陽性者の受け入れまでに福祉施設の中で現れる5段階のステップを分析されていたのですが、以下のようなものでした。
−−−−−ーーーーー
1 いきなりのエイズ
2 現場のたな卸しと整理
3 社会的使命による原動力
4 場の立ち上げと現場の納得
5 サービスを構造化する
ーーーーー−−−−−
中でも3番目のステップである「社会的使命感」と「現場の納得」を重要なポイントに挙げられていました。

受け入れを打診されたときに、まず打診された人が「社会的使命感」として受け入れを前向きに考えたとして、その次の「現場の納得」にこぎつけるまでが一番大変だという点で、医療側の岡本さんと完全に一致していたように感じられたのです。
岡本さんのほうは、「キーパーソンの心が折れないように支える」と表現されていました。

例えば、受け入れを検討するに当たって、施設長などがまず受け入れを検討することを決めて、施設のスタッフ会議や、医療と福祉が同席してのカンファレンスが実施されるわけですが、この場で現場の猛反発に合う、という事例が多々あるのだそうです。それは理解不足から来る根拠の無い不安などによるものなのでしょうが、知識を与えただけでは解消されないことがエピソードとして示されました。
福祉の人は困っている人には常に救いの手を差し伸べるだろうという理想的な福祉像はあっさり崩壊し、それぞれが現実的な解決策・・・受け入れるという解決策も受け入れないという解決策も起こりえますが、それをめぐって対立する構図になるという実例でした。

ところで、ある調査では、医療・福祉職にまとめられていましたが、就労中の陽性者のアンケートで10%くらいがこの職種にあると回答していました。つまり福祉施設にもある程度の陽性者が職員として入っているということです。必ずしもカムアウトを伴わない形で。
実は福祉の現場の理解ってそちらの意味でも重要で、例えばこの現場が猛反発しているカンファレンスに、職員の一人として陽性者が同席していたらどうでしょう。とんでもなくいたたまれないことは間違いないです。あるいは同僚の態度にキレてしまうかもしれない。
でもその場の勢いでのカムアウトとかは余計な混乱を招きそうですし、避けて欲しいと思います。
受け入れとしても、また働く場としても、本来福祉の職場ってもっと陽性者が理解されてしかるべきなのだと思うのです。

その一方で、福祉業界にいる立場としては、じゃあHIV、せめて免疫機能障害について学ぶ機会ってどのくらいの頻度で提供されるのか、と考えると、まあ全然無いよね、って思ってしまうのが実情なのです。現場は実務でいっぱいで、研修の時間は決して多くありません。
エイズが世の中に登場して30年、というフレーズは学会中なんども使われましたが、この30年の間、HIV/AIDSの問題は医療の内側にいる時間が長すぎて、福祉の世界ではまだ新しい課題のままなのかもしれません。
そのタイムラグを埋めないままに医療が福祉の世界にアプローチしても壁は高いのだろう、と思います。
そして医療側も福祉側も、もしかしたら当事者も、その壁をどうにか低くする努力をもっと重ねなければならないのだろうと思います。

などという語りも理想ではあるのですが、シンポジウムの中では、年齢層により受け入れへの前向きさ・後ろ向きさに違いがあるという話も出ました。
これはおそらく、30年前のエイズ報道から、日本にエイズが上陸してエイズパニックを引き起こしたあたりの記憶があるかどうかなのだろうと思います。
反対に、若い層では意外と抵抗が無い。このことは僕も大学の授業にゲスト講師として呼ばれたりする中でも実感していることです。

これから福祉の世界の担い手になる人たちに、福祉系の大学などの教育の場で、もっとHIVのことを伝えていく必要があるのだろうな、と自分の中ではまとめました。
ボランティア活動とは違う形で自分にできることも、より具体的にためして行くべき時期なのかもしれません。

学会報告はあと2回くらい続きます。
学会以外にも報告したいことがたくさんあるのですが、果たして年内に終わるのか・・・・(苦笑)。
posted by sakura at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | ボランティア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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